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2007年08月20日

音楽のような本をつくりたい――ご挨拶にかえて

みなさん、はじめまして。アルテスの木村元です。ウェブサイトのオープンにあたり、ご挨拶させていただきます。

大学を卒業してすぐに出版社に入社し、以来丸19年、ひたすら書籍を作りつづけてきました。書籍といっても、勤務していたのが音楽之友社という専門出版社でしたから、「音楽の専門書籍」ばかりを、数にして200点以上せっせとつくってきた、ということになります。

このたび、同じく音楽之友社出身の鈴木とアルテスパブリッシングを立ちあげるにあたって、「〈音楽〉ということばは社名に入れないようにしよう」と確認しあい、「技芸・学芸一般」を意味するラテン語「artes」を名前に冠したわけですが(「会社案内」もご参照ください)、でも専門出版社で育った人間がいきなり専門でないことを始めるわけにもいきません。やはりこれからも「音楽の専門書籍」を中心に、それ以外のことにも少しずつチャレンジしながら、出版活動をしていきたいと考えています。

でも、せっかく新しく会社をはじめたのですから、胸に秘めたるささやかな野望というのも、ないではありません。ぼくたちはこれまで「音楽についての本」をつくってきましたが、これからは「音楽のような本」をつくってみたい――というのがぼくの夢です。

考えてみれば、「音楽書籍」ということばは、それじたいのなかに矛盾というか背理を含んだことばです。「音楽について書かれた本」を読んでも、かんじんの音楽は聞こえてこないし、音楽を聴いたときの感動を味わうことができるわけでもない。「本をいくら読んだって、音楽がわかったことにはならない」といわれることもよくあります。そのとおりでしょう。

ただ、そもそも本というものは、そのなかに書かれている知識・情報の容れ物というだけではないのではないでしょうか。その重みをたなごころに感じ、カヴァーや本文用紙の質感を指に感ずること、からだ全体に知がしみこんでいくのと同じスピードでページを1枚1枚めくること、読み了えた本をそっと書棚に戻すときの充実した気持ち――それらすべての総体をぼくたちは「本」という名前でよんでいるのかもしれません。

アルテスがこれからつくる本の多くは「音楽についての本」になるはずです。でも、ただたんに「音楽についての知識・情報をパッキングした容れ物」をつくるのではなく、むしろ、かりに音楽についてひとことも書かれていなかったとしても、その本を読むことじたいが、なにかよい音楽を聴いたときと同じような体験をあたえてくれる――そんな本をつくれたら、と心から願っています。

最後になりましたが、今日にいたるまで応援・協力をいただいたすべての方々に、心から感謝いたします。これからもアルテスパブリッシングを末永く見守り、ご指導くださいますよう、この場を借りてお願い申し上げます。[木村]

2007年08月23日

インディーズ・レーベルのように

相棒の木村にすっかり出遅れてしまいましたが、日本で2番目に小さい出版社(^^)、アルテスパブリッシングの鈴木茂です。参考書を買ってきて株式会社の作り方を勉強するところから始めて、自力で登記にこぎ着けたのが4月5日。それからさらに4ヶ月以上かけてウェブサイトをオープンできました。ようやく世の中に存在している実感が湧いているところです。

「自分で出版社をやってみたい」という思いが自分のなかでくっきりと形になっていくにあたっては、たったひとりでCDレーベルを運営している友人たちの影響が大きかった。制作からプロモーション、販売までフル回転しているdoubtmusicの沼田さんやThe Music Plantの野崎さんを見ていて、出版もあんなふうにやれたらいいんじゃないか? と思うようになったのだ。それに中川敬、山口洋、大熊ワタル、ムーンライダーズといった敬愛するミュージシャンたちの真にインディペンデントな活動にも大いに刺激された(同じ再販商品とはいっても、CDと書籍では業界事情もちがうし、出版業界の新規参入障壁の高さも実感しているけど、その話はまた別の機会に)。

もうひとつ、3年ほど前に著作権法改正反対運動に参加したときに切実に感じたのが、自分で責任がとれる自前のメディアが欲しい、ということ。だれかに迷惑をかけるんじゃないか、なんて気にしなければいいのかもしれないけど、ついつい余計な気を回してし、不自由を感じてしまったのだった。

そんなわけで、インターネット・ラジオのカフェ・フィガロでも喋ったように、創業の思いみたいなことをあえて言葉にすれば、目新しさはないけど、「出版のインディーズ・レーベルをやりたい」というのがいちばんしっくり来るとおもう。

音楽と出版のなかのごく限られた世界で生きてきただけで、これといって高邁な理想があるわけじゃないし、編集者として特別な才があるわけでもない。もちろん豊富な資金とも縁がない。それでも、書きたいことを持っている人、それを本というかたちにして世に出したいと望んでいる人が、その思いを実現していくお手伝いぐらいはできるんじゃないか。や、もっと正直に言えば、自分が読みたい本、世に存在させたいと思える本を作って売って、食べていけたら…。「本は、ニーズがないのに作られる珍しい商品だ」とも言われるけど、逆に言えば出版はこんな素朴な夢が通じる(かもしれない)世界なのだ(音楽も)。

同じ思いを抱いている編集者は無数にいると思う。どこの会社で仕事をしていても、多くの編集者はみな同じ愚痴をこぼし、同じ怒りを抱え、同じ夢と迷いを抱きながら、仕事をしているんだと思う。

そんななかでずいぶん時間はかかったけど(四捨五入したらもう50だ!)とにもかくにも版元としてスタートを切ることができた僕らは幸せ者だ。多くの友人・知人、仕事仲間、そして出版界の先輩たちから、親身な励ましの言葉と現実的で有益なアドバイスをいただいた。編集者二人で始めたこの先行きのしれない零細出版社に大事な原稿を預けてくださった著者と翻訳者のみなさんにも、どんなに感謝してもしきれない。質の高い本を作って、会社をきちんと成り立たせて、ご恩返しをしたいと思う。[鈴木]

2007年08月24日

8/22|指揮者はガテン系がいい

2010年のショパン・イヤーに向けて、小坂裕子さんにお知恵を拝借。方向性の違った面白いアイディアをいくつもいただいた。「専門家の話を聞く」ということは、編集者にとってとっても楽しく、ありがたく、そしてたぶんもっとも重要な仕事なのだ、と再認識。

高田馬場で昼食を兼ねて作戦会議。考えるべきことが多すぎて、隊長とふたりで途方にくれる。でも、会議の前に買った本についてだべってたりして、なんかこう、まったりしてしまうのであった。うちら、いつもそうです(苦笑)。

吉祥寺でデザイナーの久保和正さんと、リュック・フェラーリの映画を2本。1960年代のセシル・テイラーとオリヴィエ・メシアンのリハーサルを収めた貴重な映像。セシル・テイラーの矛盾にみちた語りと、エネルギッシュな演奏。首尾一貫しないことを首尾一貫しておこなうことのすごさ。かたや、テイラーが「音楽の行為を分割する」ものとして否定した「楽譜」を終始手にしながら、音響の建築現場を冷徹なまなざしで監督するひと――メシアン。

去年観たフェラーリの『ヴァレーズ礼賛』ではブルーノ・マデルナ、このメシアンではセルジュ・ボドが、「解釈をする人」ではなく、楽譜に書かれてあることをきちんと演奏する「ガテン系」職人指揮者として登場。フランスの現代音楽の指揮者って、こういうひとが多いんだろうか。[木村]

2007年08月28日

8/23|ピアノが鳴ってしまう

銀行や市役所をまわってから(わたくし、総務担当なもんで^^)、梅丘の橋本金夢さんの仕事場へ。ややこしい歴史地図の依頼。細かいこといわずに「まかせとけ」ってスタンスがほんと気持ちいい。

巣鴨のピティナで福田専務理事と事務局の實方さんと、これから始まるウェブ連載について打ち合わせ。ピティナのウェブサイトを「ヴァーチャル学会」というイメージで展開したい、という福田さんの構想に深く賛同。これからは学問の時代です。

バビューンと新宿へ。片山杜秀さんと冬に出す新刊の打ち合わせ。9月に出る右翼の本がようやく校了になったそうで、充実のご様子。先週、自宅書庫が蔵書の重量で「全壊」したとのこと。笑っちゃいけないけど涙が出るほどおかしい。

夜は原宿で大井浩明さんのリサイタル。川島素晴さんの「eX.(エクスドット)」シリーズの一環で、ひさびさのオール現代音楽もの。この人の音色がとにかく好き。理屈抜きで気持ちいい。ピアノを鳴らそうというのではなく、ピアノがみずから欲して鳴ってしまう、そんなイメージ。これは大井さんがブログなんかで書いている「脱力」ということの要諦だろうし、なにより、「現代音楽は美しいか」という永遠のテーマにひとつの解を与えるものだと思う。だって、美しいんだもん。[木村]

2009年01月06日

謹賀新年!

遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、NHK教育テレビでも放映された毎年恒例の「ウィーン・フィル ニューイヤー・コンサート」はごらんになりましたか? 11月に刊行した『バレンボイム音楽論』の著者、ダニエル・バレンボイムが初登場ということで、2009年のアルテスは元旦から大盛り上がり。どんなに軽い曲でも剛球勝負、マエストロの真骨頂といったウィンナ・ワルツを堪能しました。

おりしも年末からイスラエル軍がガザ地区を空爆(その後、地上軍が侵攻)とのニュースが流れ、中東問題に積極的に関与してきたマエストロの発言が注目されましたが、毎年おきまりの《美しき青きドナウ》のイントロを中断しての挨拶のなかで、「中東に人間の正義がもたらされんことを」と簡潔にふれただけでした。ただ、そのひとことにこめられた万感の思いを感じとったであろう聴衆からは、敬意に満ちた拍手が送られ、行動する音楽家バレンボイムの信念が、その音楽をつうじて確実に浸透していることを感じさせました。

現実のリアリティを前に、ともすれば色褪せてしまいそうな「音楽の力」というものを、いまいちど実感することができたような気がしています。

[木村]

2009年02月28日

国立劇場公演ガイドにエッセイを書きました

独立行政法人日本芸術文化振興会が毎月発行している『日本芸術文化振興会ニュース』3月号に、エッセイを書かせていただきました。国立劇場の公演ガイド、といったほうがわかりやすいでしょうか。私が書いたのは「1000字エッセイ」というコーナー。「本は手で読む」と題して、本というものについて、いつも自分なりに考えていることをつづってみました。

先日は舞楽《青海波》のフル・ヴァージョンの復活上演(120年ぶりとか)を観に、国立劇場に行きましたが、お客さんの熱気にびっくり。あらためて雅楽や邦楽の人気を実感しました。3月の歌舞伎(魚屋宗五郎)も楽しみです。

[木村]

2010年01月01日

新年のご挨拶

2010年06月25日

7月からお店で使っていただくPOP2種公開



上:わくわく感を強調。下:とにかくインパクト勝負!

吉原真里さんの『ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール』、そして「片山杜秀の本1〜4」のPOPを作成しました。それぞれ著者近影入り(というか、片山さんの場合、はみ出してますが……)です。7月から、お店で見かけたら、ぜひ立ち止まって、本を手にとってみてください。

[木村]


2010年08月09日

インターン実習日誌-1(国立音大Sさん)

アルテスはNPO法人「音楽キャリア・サポート・ネット」の音楽インターンシップ・プログラムに協力していますが、先週は国立音大3年のSさんが来てくれました。週末に「実習日誌」を送ってくれましたので、本人の許可を得て、公開させていただきます。ぼくたちにとっては、日常的な業務でも、大学生には新鮮なんだなということがあらためてわかって、ぼくらもかえって勉強になります。

[木村]


◎8月3日火曜日<1日目>
 インターンシップの1日目ということもあり、緊張しながら会社にむかいました。
 まず初めの仕事は、注文された本の発送をしました。皆さんは普通の事務作業として簡単に行っているはずなんですが、私の手にかかるとそうはいきませんでした。発送先の名前の漢字が旧字で分からなかったり、「さぁ、印刷しよう!」と思ったらインクが切れて近くの電気店に買いに行ったりして、たった1冊の本を送る作業を長時間格闘していたんではないかと思います。時間がかかったこともあり、これが初めての仕事だったので、かかった時間はもちろん届きはしませんが、これが注文された方の手に届くのかと思うと、とても嬉しく思いました。
 午後はいま編集中の冊子にかんして、掲載する会社や財団の役員名などの名称に変更がないかを調べました。この日は、この仕事を最後まで終えられずに1日目を終えました。


◎8月4日水曜日<2日目>
 午前中は途中、昨日覚えた発送作業をしたり、昨日終わらせることの出来なかった調べの続きをしました。
 午後は小野さんの営業に同行させていただきました。最初、銀座のヤマハへ行きました。「営業」という言葉はよく聞きますが、初めてのことなので楽しみにしながらむかいました。ヤマハでは店頭に本が並んでいるかを確認したり、担当の方に挨拶をしたりしました。その後、山野楽器や丸善に行きました。電車の移動中に小野さんから現在の出版業界についてのお話を伺い、書店別の売上ランキングなど見せて頂きました。まず、書店の多さにも驚きましたし、一部の地域に書店が集中していることにも驚きました。生粋の香川県民として18歳まで香川で生きてきた私は、恥ずかしながら宮脇書店しか知りませんでした。もしかしたら、宮脇書店以外の書店へ行ったこともあるのかもしれませんが、自身の認識としては「本屋さん」とくくって考えていたところがありました。
 そのあと、小野さんのご紹介で音楽之友社のIさんにお会いし、お話をうかがいました。本の知識も出版業界の知識もない私にとって、とても貴重なお話でした。音楽之友社がどのように成り立ってきたのか、他の出版社との違い、更には現在の出版業界の現状などを教えてくださいました。もちろん難しい話も多々ありましたので、全て理解出来た訳ではありませんが、丁寧に分かりやすくお話してくださったこともあり、自分なりに考えることができました。時代の変化に対応することの難しさを痛感しました。そしてこれは出版業界のみならず、どの業界にも見られることだろうと思いました。このような問題を真摯に受け止め考えている人たちが今の社会をつくっているんだなと思いました。

◎8月6日金曜日<3日目>
 午前中は実際に雑誌に載る写真を選ぶために、写真を選ぶ作業をしました。何十枚の写真からたった3枚の写真を選ぶ作業ですが、皆さんで様々なことを考慮して選ばれてました。より良いものを作ろうという思いがそこからもひしひしと感じられました。実際にいつもこのように進めているんだと思うと、1冊の本を作ることの大変さも感じました。
 午後は調べの続きをしました。やっとこの日に終わらすことが出来たのですが、この作業を通して企業名をたくさん知ることができました。資本金〇億などと検討もつかない額がかかれていると、どのようにお金を使っているのか会社の運営がとても気になりました。普段ブログなどをみることはあっても、会社概要の役員をみるようなことはありません。もちろん会社を取り締まる立場にいる方々と関わる機会も全くありません。音楽に対してこんなにも多くの人たちが関わるということをより深く感じ、とてもうれしく思いました。
 印刷方法などについても教えて頂きました。カラー刷りの場合は版画のように重ねてたくさんの色を出していると伺いました。昔の印刷の方法ではなく、今もその手法を使っているそうです。私はプリンターのようなものを想像していたので、その手法を使って今もつくられていると聞いた時は驚きました。しかし、とてもうれしく感じました。うまく説明できませんが、書籍らしさを感じたからです。私にとって書籍は過去の伝達手段に感じているところがあります。アナログと言えば簡単なのかもしれませんが、その言葉では言い表せないよさが書籍にはあると思います。デジタル化が進む中でも、書籍を手に取る人がいる所以だと思います。とても大切にしなければならない文化だと感じました。それと同時に、もっと出版業界について勉強しなければと思いました。

2010年08月15日

インターン実習日誌-2(東京学芸大Nさん)

先週の国立音大Sさんにひきつづき、8/9(月)から3日間、東京学芸大学2年生のNさんが、インターン生としてアルテスに来てくれました。おりしも、お盆進行でばたばたのアルテスで、彼女はなにを学んだのでしょうか?

[木村]


◎8/9(月)/1日目
 午前中は、OCRで読み込んだ文章を、元のテキストと見比べて校訂する作業をしました。OCRというソフトがあるということもその時にはじめて知りましたが、同時に、その校訂の作業は直接人の手で行っているということに驚きました。
 午後の作業は、新刊の注文を取次会社ごとに分け、それぞれ集計しました。現在、日本の出版物の大半が、日販とトーハンの2社によって取次ぎされていること、その中でも音楽に関する書物は、楽譜などの場合もあるので、少し特殊であることなどを知りました。その後、依頼を受けて制作している冊子に関する会議に同席させていただきました。たった1ページをとっても、いかに記事を見やすく、内容をおもしろいものにするかという工夫をところどころに施し、原案がみるみるうちに変わっていく様子を間近で見ることができました。文字の大きさや余白の使い方など、作業は私が想像していたものよりも細部にまで及ぶもので、一冊の冊子を作るということの大変さを知りました。

◎8/10(火)/2日目
 午前中は、新刊のDMを送る作業の準備をしました。全国の音楽大学の一覧を見て、DMを送る学校を書き出し、大学名、学部名、住所等をエクセルに打ち込んで一覧を作りました。この大学では、どの学部がこの本に興味をもち、注文していただけるだろうかということを考ながらしなければいけないので、手作業ではないと出来ない上に、とても手間や時間のかかる大変な作業でした。
 午後は、今度本を書かれる著者の方との打ち合わせに同席させていただきました。今回の打ち合わせでは全体の構成を大まかに決めました。序論、本文、そしてその他の付録や索引などの各ページ数の大まかな割り振り、付録の内容、扉の絵などについて話し合いました。実際に私が読んでいる本も、このような過程を経てつくられているということを思うと、とても新鮮で、興味深いものでした。「著者」と「編集者」の関係というよりは、ひとりの人間同士が、ひとつのものを作り上げるために良い案を出し合っている、というように思われました。その後は、大型の書店に行き、音楽書担当の方と、今度出る新刊のことや、書籍の配置のことなどをお話しました。このようなことも大切な仕事の一部であるということを実感しました。

◎8/11(水)/3日目
 この日は、冊子の記事を依頼する方に送る資料の作成をしました。表記一覧などの資料をOCRで読み込んでPDFファイルにしたものをディスクにコピーしたり、印刷したりしました。いわゆる事務作業ですが、途中で紙が切れたり、データをうまく印刷機に送れなかったり、予想外のことばかり起きてとても大変な作業でした。その作業と平行して、東京書籍の「音楽専門館」に載せる新刊の案内を作りました。そのホームページを見て、アルテスの本をはじめて知る方もいるわけで、そのような方にもこの本がどんな内容であるかを、簡潔にわかりやすく伝えるにはどうしたらよいか、アルテスのホームページや、東京書籍のホームページに載っている他の本の案内などを見て考えました。

 皆さんが普段からなされている作業は、自分にとってはすべてはじめてのもので、わからないことばかりでした。その中で一番に感じたことは、出版業界は、人間の手によってなされている作業がとても多いということです。それは、人と人とのつながりがとても重要な世界であるということにつながると思います。皆さんのお話を聞く中でも、また実際自分が打ち合わせなどに同席させていただいた際にも感じた事ですが、うわべの関係ではなく、もっと深い部分で人が関わりあって成り立っている社会であると感じました。お互いに信頼関係がないと良い
ものをつくることはできないし、逆に真に素晴らしいものは、そのような土台のもとで成り立っているということを実感しました。
 残りの実習も、よりたくさんのことを学びたいと思います。

2010年08月30日

インターン実習日誌-3(東京学芸大Nさん)

8/20(金)に実習を終えた東京学芸大のNさんから実習日誌が届きました。なかなか届かないなあと思っていたら、実習のあと、体調を崩していたとのこと。毎日暑かったし、けっこう忙しくさせちゃいましたから、きっと疲れたんでしょうね。「インターン生もこき使うアルテス」というイメージが定着しないか心配(笑)。Nさん、お疲れさまでした!

[木村]


8/16  4日目
今日の午前中は著者の方が書いた生の原稿をコピーしました。そのあとは、大学へ送るDMの作成の続きをしました。ワードやエクセルは大学でのレポートなどで使うだけなので、大学のリストをつくることだけなのに予想以上に時間がかかってしまいました。
午後は、制作中の本の全体的なデザインについて、デザイナーさんとの打ち合わせに同行させていただきました。表紙のデザインはもちろん、帯の長さや紙のことなどいろいろなことについて話し合いました。普段それほど、帯や紙質などに気をとめたことはありませんでしたが、もう少し柔らかい紙を使ったり、あるいは帯を長めにしてみたり、小さな工夫を加えることで、手に取った時の印象が大きく変わってくることに気付きました。また、そのように細部にこだわったつくりは、日本の出版物の特徴であるということも教えていただきました。確かに輸
入物の本は、見返しなどが無く安価な紙でつくられるペーパーバックのようなものが多いと思いました。意外なところに繊細な日本らしさを感じました。
その後は、新刊の注文数などの確認のため松沢書店に行き、中を見学させていただきました。そこには数えきれないほどの出版物があり、ここから全国の書店や楽器店に運ばれていくという現場を実際に目にして、本当にたくさんの人の手がかかっているのだということを実感しました。


8/17  5日目
 午前中は引き続きDMの作業をしました。大学の入試案内表をみてリストを作成したのですが、今現在の大学の情報(学科名など)と違いがないか、各大学のホームページと照らし合わせて確認しました。一部の私立大学では、学部名が変わっていたり、募集を停止していたりということがありました。もちろん他の業界においても同様に言えることとは思いますが、特に出版業界は常に最新の情報を知っていなければいけない世界だと思いました。
 午後は、そのリストを封書に貼るラベル用に変換する作業をしました。マニュアル通りにやったつもりでもなかなかうまくいかず、とても苦戦しました。


8/18  6日目
 今日は午後からの予定でした。昨日作成したラベル用のものを印刷し、注文票やあいさつ文を封筒の中に入れるなどのDMの最終の作業を行いました。もちろんたくさん補助してもらいながらでしたが主に自分が担当した仕事だったので、一通り作業が終わったときは達成感を得ました。
 この日は、ある冊子の編集会議にも出席させていただきました。依頼された仕事の場合、依頼主から指定を受けている『ページ数』というものがあります。そのため、この特集は1ページ削って、ここの部分をもうちょっとボリュームのあるものにしたほうがいい、あるいはもうひとつ企画を増やして調整するか、などの話し合いもされていました。これは、あまりページ数に細かい指定のない単行本などの時には問題にならないような部分だと思いました。出版物によっては、それぞれに異なった部分に注意を払わなければならないというのは新たな発見でした。


8/19  7日目
 今日は午前、午後を通して今度出版する本の原案を見せていただいて、それについて自分なりの意見を書き込んでいきました。もともとある音楽関連のテレビ番組の台本だったもののコピーそのものなので、文だけでなくイラストもたくさん載っているものでした。音楽の関する書物を作る場合、音楽というものは『音』という聴覚の情報であり、それを『文字』という視覚の情報にいかにうまく変換するか、というのが一番重要な点であると思います。それもできるだけわかりやすく、その音楽のもつ雰囲気や世界観を損なうことなく伝えるということは、著者や編集者の大きな役割であり、とてもやりがいがあり、面白い部分であるように思います。そういう意味では、音楽に関する書物の編集の作業というのは、普通の小説や雑誌の編集とはまたすこし違ったスキルも問われるのではないかと思いました。
 この日は、新刊のタイトルについてみなさんで話し合っていたのですが、タイトルの重要性というものにも気付かされました。このタイトルもほうがやわらかいイメージになる、この言葉が入っていると敷居が高く感じるのではないか、副題も少し変えてみようか、などの議論が行われていました。狙う年齢層や職業などによっても違ってくるし、いくら内容がすばらしいものでもタイトルが興味を引き付けるようなものでなければ、実際手に取ってくれる人の数もかなり変わってくるだろうということも改めて気付きました。


8/20 8日目
 午前中は、新刊の原稿の文字化けやスペルミスなどのチェックをしました。
 午後は、他社へ連れていっていただき、出版業界の現状や音楽系の出版物・楽譜に関することなど、いろいろなお話を聞きました。出版という分野で特徴的なのは著作権というものが関わってくるということ、そしてその管理に関すること、また、携帯電話やインターネットの普及で、ここ数年で出版業界とくに雑誌などがかなり変化してきたことなど、たくさんの興味深いお話を伺うことができました。
 その後は、あるラジオ番組の収録の立ちあいに同行させていただきました。ラジオは普段からよく聴くので、収録するスタジオの中の様子や、編集の作業などを実際に見ることができて、とてもおもしろかったです。ラジオのパーソナリティをされている作家の先生や、ラジオの編集のされているプロデューサーの方とも直接お話しさせて頂いて、とても貴重な経験でした。


 今回、このインターンシップでまず一番深く印象に残ったことは、1冊の本の重みです。著者の方が原稿を書く、編集者との打ち合わせを重ね訂正を繰り返し行う、タイトルを決める、帯や表紙などのデザインをする、印刷する、そこで1冊の本ができる。そしてそれが卸業者に運ばれる、そこから各書店に配布される、そしてやっと自分の手に届く。想像を超えた本当にたくさんの人が1冊の本に関わっていて、そのシステムがすべてうまく機能していて、ようやく1冊の本ができあがるのだということを、改めて実感しました。日常的に何気なく目にしている本の?裏の面?を実際に見ることができて、新しい発見がいくつもありました。実習中に頼まれた事務的な作業も、どこかの過程で誰かが必ずしなければいけない作業であり、どんなに少なくても、どのような形でも、その1冊の本をつくるということに携わることができたことを本当にうれしく思います。
 また、前回も書きましたが、人間同士の繋がりがとても深くかかわってくる仕事であるという印象を強く受けました。おそらく、いくら文章の編集の能力に長けている編集者でも、著者の方と良い関係を築くことができなければ、きっと本当にすばらしい本は作り出せないと思います。実際にみなさんのお話を聞いたり、著者の方との電話の受け応えを聞いたりする中で、そのようなことを感じました。
 今回は、非常に貴重な経験をたくさんさせて頂きました。正直私は現時点では、出版系の会社に就職するというように明確に決めているわけではありません。しかし、今回のインターンシップでは単なる知識としてだけではなく、実際に現場で体験して自ら発見し学んだものがたくさんありました。今回の実習で学んだことを最大限に生かして、今後就職活動に役立てたいと思います。短い間でしたが、本当にありがとうございました。

2011年03月14日

出荷を一時停止します

このたびの震災の影響により、明日3月15日(火)まで商品出荷を停止させていただきます。16日(水)移行の対応につきましては、流通倉庫の状況を見て、決まりしだいお知らせいたします。みなさまにはたいへんご迷惑をおかけしますことをお詫び申し上げます。

被災された方々には、この場を借りて、心よりのお見舞いを申し上げます。一日も早く、平常の生活が戻りますように。

2012年12月27日

年末年始休業のお知らせ

アルテスパブリッシングは12月29日(土)より1月6日(日)まで休業とさせていただきます。新年は7日(月)から通常通り営業しております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

2013年06月24日

三輪眞弘さんが今年度の京都賞についての意見を表明

三輪眞弘音楽芸術』の著者である作曲家の三輪眞弘さんが、自身もかかわった今年度の京都賞の「思想・芸術部門」の選考にかんして、ウェブサイトで意見を表明されています。

第29回京都賞、思想・芸術部門(音楽)の結果について
http://www.iamas.ac.jp/~mmiwa/29thKyotoPrize.html

三輪さんは「京都賞における音楽というものの位置(価値)付けに大きな変化があった」として、次のように語ります。

……ジャズの歴史とはまさにメディアテクノロジー、すなわちレコードと放送の歴史と表裏一体のものであったはずであり、ぼくもまた、それらを通してセシル・テイラーを知っている。彼がそのジャンルにおいて、いや、100年前までは存在しなかったジャズという新しいジャンルの誕生後に、その革命的な成熟を促し、同時に音楽的にも高度で洗練された技芸を極めた音楽家だったことを信じることもできる。つまり、今回もまた世界的に称賛されるにふさわしい音楽家が京都賞に選ばれたことを疑ってはいない。しかし、その彼を選ぶためにぼくら審査員は必要だったのだろうか?

圧倒的なデータ量によって「フラット化された」この世界において、専門家のもつ高度に特殊化された知見が今後意味をもつことができるのか──。三輪さんの問いかけのもつ射程は深く、遠いものだと感じます。

[木村]

2013年07月19日

【お知らせ】アルテス下北沢オフィスの電話/FAX回線の不具合について

本日午前中よりアルテス下北沢オフィスの電話(03-6805-2886)およびFAX(03-3411-7927)回線が不通の状態が続いております。NTT東日本に問い合わせたところ、オフィスの入っているビルの共用回線の不具合と考えられるとのことで、現在修理を待っているところです。

急ぎのご連絡は「info●artespublishing.com(●=アットマーク)」まで、FAXでのご注文は稲城本社(042-313-2544)までお願いいたします。

みなさまにはご迷惑をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。

[追記]その後、無事復旧しました。ご迷惑、ご心配をおかけしました。

[木村]

2013年07月19日

【お知らせ】電話・FAXが復旧しました

前エントリでアルテス下北沢オフィスの電話およびFAX回線の不具合をお知らせしましたが、その後、無事復旧しました。ご迷惑、ご心配をおかけしました。

[木村]

2013年12月26日

吉原真里さんが自著の書評・感想文コンクールを主催します!

『「アジア人」はいかにしてクラシック音楽家になったのか?』の著者である吉原真里さんが、自著の書評・感想文コンクールを自ら主催します!
対象となる本は、弊社で今年10月に発売された『「アジア人」はいかにしてクラシック音楽家になったのか?』と、中公新書で2007年に発売された『ドット・コム・ラヴァーズ』です。

形式自由・字数制限なしで、すでにブログで掲載されているものでも可能とのこと。その際は他薦でもよいとのことです。
受賞者の書評・感想文は、選評と共に吉原さんのブログで紹介されます。そしてなんといっても副賞(特に『ドット・コム・ラヴァーズ』部門の方)がすごい!

詳しい応募要項はこちらをどうぞ!
http://mariyoshihara.blogspot.jp/2013/12/blog-post.html
[長谷]

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