飯尾洋一(著)『R40のクラシック──作曲家はアラフォー時代をどう生き、どんな名曲を残したか』(廣済堂新書)

飯尾洋一(著)『R40のクラシック──作曲家はアラフォー時代をどう生き、どんな名曲を残したか』(廣済堂新書)

音楽ジャーナリスト・飯尾洋一さんの新著(編集は木杳舎が担当)。作曲家論と世代論を結びつけた発想が心憎い新感覚のクラシック入門書。目次を見ると「第1章「激動型の作曲家」のR40時代」から始まって「円満型」「早世型」「晩成型」まで4章立て。「自分のタイプはどの作曲家かな」と探す楽しみも。

しかし、「オレは早世型だな」とか言ってムソルグスキーに親近感を抱くひと、いるんだろうか?……いそうで怖いクラシック。

[木村]


平野啓一郎(著)『ショパンを嗜む』(音楽之友社)

平野啓一郎(著)『ショパンを嗜む』(音楽之友社)

『音楽の友』誌上で2009年から2010年にかけて連載されていた平野啓一郎氏のショパン論が単行本化。生誕200年のショパン本ラッシュを避け、少し間をおいての登場となりました。平野氏の3作目の小説『葬送』の取材ノートがもとになっており、小説家ならではの独特の視点からのショパン像はとても新鮮です。

[木村]


小鍛冶邦隆・林達也・山口博史(著)『バッハ様式によるコラール技法 課題集と60の範例付き』(音楽之友社)

小鍛冶邦隆・林達也・山口博史(著)『バッハ様式によるコラール技法 課題集と60の範例付き』(音楽之友社)

昨年刊行された山口博史さんの『パリ音楽院の方式による 厳格対位法』(音楽之友社)の第3部はバッハ様式のコラールの学習にあてられていましたが、それが独立・拡大した教本が刊行されました。弊社刊『ケルビーニ 対位法とフーガ講座』の訳者・小鍛冶邦隆さんならではの歴史的視点、分析的視点が加わっているのも魅力です。

[木村]


青澤隆明(著)『現代のピアニスト30──アリアと変奏』(ちくま新書)

青澤隆明(著)『現代のピアニスト30──アリアと変奏』(ちくま新書)

アルテスもN響のお仕事などでたいへんお世話になっている音楽評論家・青澤隆明さんが待望の単著を刊行。このタイトルに、昨年亡くなり、今年生誕100周年を迎えた吉田秀和さんへの深いオマージュを感じるのはわたしだけではないでしょう。詩的で繊細な青澤さんの文章を敬愛するわたしは、吉田秀和さん亡きあと、音楽評論を文学に昇華させてくれるのは青澤さんではないかとひそかに思っていました。その音楽への透徹した鋭い眼差しもまた──。夜更けにひとりピアノを聴くとき、座右に置きたい本です。

[木村]


小野幸惠(著)『焼け跡の「白鳥の湖」──島田廣が駆け抜けた戦後日本バレエ史』(文藝春秋)

小野幸惠(著)『焼け跡の「白鳥の湖」──島田廣が駆け抜けた戦後日本バレエ史』(文藝春秋)

弊社刊、『幸四郎と観る歌舞伎』ほかでおなじみのライター/編集者の小野幸惠さんの新著。1919年(大正8)に生まれ、今年7月に永眠したバレエダンサー・島田廣(しまだ・ひろし)の生涯を追ったノンフィクションです。1946年8月、敗戦からわずか1年、焦土の東京での「白鳥の湖」全曲日本初演をなしとげた日本バレエ界の草分けともいえる人物です。戦後バレエ史の貴重な証言というだけでなく、震災後の日本にとってひときわの意味をもつ書となることでしょう。

[木村]


久元祐子(著)『名器から生まれた名曲 1 モーツァルトとヴァルター・ピアノ』(学研パブリッシング)

久元祐子(著)『名器から生まれた名曲 1 モーツァルトとヴァルター・ピアノ』(学研パブリッシング)

アルテス刊の『「原典版」で弾きたい! モーツァルトのピアノ・ソナタ』と同月発売の久元祐子さんの新刊。モーツァルトがヴァルター・ピアノを使って書いた3曲が取り上げられ、2色で刷られた楽譜には演奏法や形式、指づかいが分かりやすく書き込まれています。また「ヴァルター」と「現代のピアノ」の鍵盤を比べた図版も当時の楽器の仕様を伺いみることができてとても勉強になります。

[桑野]

細田晴子(著)『カザルスと国際政治──カタルーニャの大地から世界へ』(吉田書店)

細田晴子(著)『カザルスと国際政治──カタルーニャの大地から世界へ』(吉田書店)

パウ(パブロ)・カザルスが激動の20世紀を、音楽家としてだけでなく、政治的抵抗者として生き抜き、多くの人々に影響を与えたことはよく知られています。本書はカタルーニャ、フランス、プエルトリコと拠点を移しながら、さまざまな知識人たちとネットワークを結び、旺盛な平和運動を展開したその姿を描いたもの。「ソフト・パワーとしてのクラシック音楽」を彼ほど体現した存在はなかったのではないかと思わされます。

[木村]


小宮正安(著)『音楽史 影の仕掛人』(音楽之友社)

小宮正安(著)『音楽史 影の仕掛人』(音楽之友社)

音楽史は作曲家のみでは成らず。この本の目次にはバッハ、モーツァルト、ベートーヴェンといった大作曲家の名前の代わりに、バーニー、コロレド、スヴィーテン、ルドルフ大公……といった「脇役」の名前が並んでいます。総勢25人。「もしも彼らがいなかったら……」を想像しながら読んでみてください。

[木村]


パスカル・ドゥヴァイヨン(著)村田理夏子(訳)『パスカル・ドゥヴァイヨンのショパン・エチュード作品25の作り方』(音楽之友社)

パスカル・ドゥヴァイヨン(著)村田理夏子(訳)『パスカル・ドゥヴァイヨンのショパン・エチュード作品25の作り方』(音楽之友社)

先に刊行された作品10に続き、エチュード作品25の各12曲を料理のレシピふうに解説。100頁ちょっとの手軽な本ですが、なかなかどうして細かいところまで気配りされた内容。練習のポイント、身体の感覚などわかりやすく、ていねいに解説されています。

[木村]


サラーム海上(著)『おいしい中東 オリエントグルメ旅』(双葉文庫)

サラーム海上(著)『おいしい中東 オリエントグルメ旅』(双葉文庫)

アルテス刊の『21世紀中東音楽ジャーナル』に続くサラームさんの新刊は待望の料理本! 世界三大料理のひとつと言われるトルコ料理を筆頭に、レバノン、モロッコ、エジプト、イエメン、イスラエルの食体験とレシピがこれでもかと500ページを超える文庫本にてんこ盛り。アマゾンのカスタマー・レビューの“満を持して食い意地を炸裂させた一冊”とは言い得て妙^^。うっすらベジ嗜好の僕にも舌なめずりさせちゃうサラームさんの旺盛な食欲には参りました! [鈴木]


曽我大介(著)『《第九》虎の巻──歌う人、弾く人、聴く人のためのガイドブック』(音楽之友社)

曽我大介(著)『《第九》虎の巻──歌う人、弾く人、聴く人のためのガイドブック』(音楽之友社)

猛暑が続いていますが、そろそろ「歌い手」のみなさんにとっては「第九シーズン」が到来したのでしょうか? もはや日本の国民的行事ともいえる「第九」について、B5判・144頁に(けっこう細かい文字で)ぎっしり詰めこんだ本。とりあえず1冊、どうぞ!

[木村]


武藤浩史(著)『ビートルズは音楽を超える』(平凡社新書)

武藤浩史(著)『ビートルズは音楽を超える』(平凡社新書)

アルテスの社内でたまに話題になるのが、「ビートルズはなぜ特別なのか」というテーマです。ただ、自分にとっては“特別”でも、若いスタッフにとってはまったく特別じゃないので、けっきょくはおじさんが若いモンに自分の好きな音楽を押しつけてるだけ、という図になってしまっているのですが……。そのテーマに音楽面からもっとも鋭くせまったのが、和久井光司さんの『ビートルズ原論』(河出文庫)だと思いますが、この武藤さんの本は日本人にはよくわからないイギリスの文化背景を、これまでになくわかりやすく説明することによって、「ビートルズの特別さ」に肉薄していると思います。

[木村]


西村朗(著)『曲がった家を作るわけ』(春秋社)

西村朗(著)『曲がった家を作るわけ』(春秋社)

西村さんにとっての何冊目の本になるのだろうと思ったら、じつは単著としてはこれは初めて?(ちょっとびっくり) これまでのは吉松隆さん、湯浅譲二さん、井阪紘さん、沼野雄司さんとの共著だったんですね。対話の天才が単著を書いたらどうなるのかなと思って読みはじめましたが、これがすこぶる付きの面白さ。回想のなかに登場する人々の口調の生き生きとしていること。対話の達人は記憶の天才でもあった?(というか、この2つにはたぶん相関関係があると思いますが)

[木村]


川崎弘二、松井茂(編)『日本の電子音楽 続 インタビュー編』(engine books)

川崎弘二、松井茂(編)『日本の電子音楽 続 インタビュー編』(engine books)

アルテス』で「武満徹の電子音楽」を連載する川崎弘二さんの編著になる『日本の電子音楽』(愛育社、2006/増補改訂版:2009)は、日本の現代音楽に「電子音楽」という一ジャンルが確として存在することを、その豊饒な歴史とともに知らしめた労作でしたが、その続編となるインタビュー集が刊行されました。今回は詩人でメディアアート研究者の松井茂さんとの共著。

多くの作曲家が、放送のための作品や、映画、劇伴音楽を生業としながら、これを作品外に位置づけてきた。電子音楽は、いわゆる純粋音楽作品に対して、副次的なサウンド・デザインとして受容されがちであった。しかし、現実のアートシーンへのインパクトや影響力は逆転している。マス・メディアとしての放送局、マス・プロダクションによる国産の民生機のテクノロジーが、現代音楽に想像力を提供してきたのだ。(松井茂/本書所収「電子音楽の想像力」より)

今回、インタビューの対象となったのは、谷川俊太郎、丹波明、奥山重之助、戸島美喜夫、塩見允枝子、佐藤聰明、椎啓、藤枝守、萊孝之、志村哲の10名。それぞれ、「電子音楽」というテーマ以外にもふくらむ内容で、現代音楽全般に関心のある向きにも、また正編『日本の電子音楽』を読んでいない人にもおすすめできる本です。

[木村]


栗本斉(著)『アルゼンチン音楽手帖』(DU BOOKS)

栗本斉(著)『アルゼンチン音楽手帖』(DU BOOKS)

リリアナ・エレーロ、アカ・セカ・トリオ、カルロス・アギーレ、キケ・シネシ、アンドレス・ベエウサエルト、あるいはディノ・サルーシなどなど、近年のアルゼンチン音楽には愛聴している人が多いんですが、そんな新しいアルゼンチン音楽の潮流を、“オーガニック”をキーワードに250枚のディスクで紹介した初のガイドブック。取りあげられているのは2000年以降の作品のみ。未知の音楽ばかりなので、さて、次はどれを聴こう? とわくわくしながらページをめくってます。ビルボードライヴのブッキングも手がける栗本斉さんの書き下ろし。[鈴木]


『〈14歳の世渡り術〉学校では教えてくれない人生を変える音楽』(河出書房新社)

『〈14歳の世渡り術〉学校では教えてくれない人生を変える音楽』(河出書房新社)

「音楽は、時に励まし、時に癒し、時に人生をも変える」。雨宮処凜、池谷裕二、乙武洋匡、角田光代、柴田元幸、辛酸なめ子、西研、又吉直樹、町田康、みうらじゅん、山田ズーニーら、各界で活躍する「26名が選んだ、自分だけの1タイトル!」という企画。挙がった曲のなかでは、宮下奈都が選んだウィルコの“Yankee Hotel Foxtrot”が異彩を放ってました。[鈴木]


長谷川町蔵(著)『21世紀アメリカの喜劇人』(スペースシャワーブックス))

長谷川町蔵(著)『21世紀アメリカの喜劇人』(スペースシャワーブックス)

『文化系のためのヒップホップ入門』のは長谷川町蔵さんの新刊(発売は3月)。90年代以降のアメリカのコメディ映画をとりあげ、コメディアンや制作陣の“作家性”を明らかにしていく、本国にも存在しないという映画ガイド。コメディに限らず新旧を問わず、映画をほとんど見られなくなって久しく、出てくる固有名詞の大半がピンと来ない僕のような読み手でも、優れたアメリカ文化批評として楽しめるのはさすが町蔵さん。[鈴木]


長谷川町蔵(著)『21世紀アメリカの喜劇人』(スペースシャワーブックス))

長谷川町蔵(著)『21世紀アメリカの喜劇人』(スペースシャワーブックス)

『文化系のためのヒップホップ入門』のは長谷川町蔵さんの新刊(発売は3月)。90年代以降のアメリカのコメディ映画をとりあげ、コメディアンや制作陣の“作家性”を明らかにしていく、本国にも存在しないという映画ガイド。コメディに限らず新旧を問わず、映画をほとんど見られなくなって久しく、出てくる固有名詞の大半がピンと来ない僕のような読み手でも、優れたアメリカ文化批評として楽しめるのはさすが町蔵さん。[鈴木]


大谷能生『ジャズと自由は手をとって(地獄に)行く』(本の雑誌社)

大谷能生『ジャズと自由は手をとって(地獄に)行く』(本の雑誌社)

『植草甚一の勉強』に次いで本の雑誌社から刊行された大谷能生さんの新著。ここでは読了する前にご紹介することが多くて、本書もまだ書評をいくつか読んだだけなんですが、さすが!とうならされました。『アルテス』にもご登場いただきたい、とあらためて。[鈴木]


牧村憲一(著)『ニッポン・ポップス・クロニクル1969-1989』(スペースシャワーブックス))

牧村憲一(著)『ニッポン・ポップス・クロニクル1969-1989』(スペースシャワーブックス)

ユイ音楽出版からこの業界でのキャリアを始められた、というだけで畏敬の念をもたざるをえない大先輩(アルテス的には津田大介さんとの共著で『未来型サバイバル音楽論』を上梓された方)の書き下ろし。自身が深く関わったミュージシャンたちの活動を軸に、20年間にわたる日本のポップス(J-POPではない)が生み出された現場からの貴重な証言の数々は、言葉は簡潔ながら含蓄に富んでいて、何度も読み返したくなる。

[鈴木]


副島輝人(著)『世界フリージャズ記』(青土社)

副島輝人(著)『世界フリージャズ記』(青土社)

同年の編集者・水木さんからご恵贈いただいた、名著『日本フリージャズ史』に次ぐ世界編。1977年以来「鮮烈な前衛ジャズを追い求めて〜世界のフリージャズ祭を次々に訪ね歩いた。〜その時々に書いたレポートをまとめたのが本書である」(あとがきより)。

[鈴木]


ジョゼフ・カーマン+リチャード・タラスキン+ジャン=ジャック・ナティエほか(著)福中冬子(訳・解説)『ニュー・ミュージコロジー 音楽作品を「読む」批評理論』(慶應義塾大学出版会)

ジョゼフ・カーマン+リチャード・タラスキン+ジャン=ジャック・ナティエほか(著)福中冬子(訳・解説)『ニュー・ミュージコロジー 音楽作品を「読む」批評理論』(慶應義塾大学出版会)

1980年代以降、音楽学の一傾向、というよりは海外ではメインストリームのひとつとなった感のある「ニュー・ミュージコロジー」の主要論文をあつめたアンソロジー。訳者あとがきの記述をみると福中冬子さんが編集されたようですね。まさに「待望の」と冠するべき重要な文献だと思います。

[木村]

追記:細かいことですが、福中さんのなさったお仕事には「編集」も入っているはずなので、「訳・解説」でなく「編訳」でいいと思うし、巻頭の「はじめに」を誰が書いているのかがひとことも記されていないのも「?」です(内容からすると、おそらく福中さんが書かれているものと推察されます)。


ミッシェル・モラール(著)余田安広(訳)『ライプツィヒへの旅 バッハ=フーガの探究』(春秋社)

ミッシェル・モラール(著)余田安広(訳)『ライプツィヒへの旅 バッハ=フーガの探究』(春秋社)

この本もユニークなバッハ論。バッハ存命当時のフランスの楽譜商が送られてきた楽譜を見て、その作曲家と契約するために若い友人ふたりをドイツに遣わす──というのがオープニング。作曲家というのがバッハ、そしてその楽譜というのが「平均律クラヴィーア曲集」なのですが、ふたりのフランス人音楽愛好家が、徐々にこの作品の素晴らしさに目を開かれていくさまをともに体験しながら、「平均律」の奥義を学ぶことができるという凝ったしかけがほどこされています。

[木村]


塚谷水無子(著)『バッハを知る バロックに出会う 「ゴルトベルク変奏曲」を聴こう!』(音楽之友社)

塚谷水無子(著)『バッハを知る バロックに出会う 「ゴルトベルク変奏曲」を聴こう!』(音楽之友社)

日本初のパイプオルガンによるバッハ「ゴルトベルク変奏曲」の録音などで知られる若手オルガニストによる、バッハ入門、「ゴルトベルク」入門の書。グールドでバッハに惹かれた人に、ぜひ。

[木村]


東川清一(著)『音律論──ソルミゼーションの探究』(春秋社)

東川清一(著)『音律論──ソルミゼーションの探究』(春秋社)

東川先生の新著! 春秋社からはもう13冊目になるようです。ソルミゼーション教育への飽くなき信念がつぎつぎに書籍として結実していくさまに、深い敬意と感慨をおぼえずにいられません。その間にわが国では音律に関心をもつひとが目に見えて増えてきているように感じます。時代が東川先生にやっと追いついたのか!? 味読したい1冊です。

[木村]


キース・エマーソン(著)、川本聡胤(訳)『キース・エマーソン自伝』(三修社)

キース・エマーソン(著)、川本聡胤(訳)『キース・エマーソン自伝』(三修社)

さきごろ来日して元気な姿を見せてくれた元ELPのキーボード・プレーヤー、キース・エマーソンの自伝。原題は「Pictures of an Exhibitionist」。「訳者あとがき」にもあるように、「露出狂の肖像」というような意味になるようですが、もちろんELPの名盤『展覧会の絵』をもじったもの。訳者はフェリス女学院大学准教授で、弊社刊『キーワード150 音楽通論』(久保田慶一編)ではポピュラー音楽の関連項目を一手に引き受けて執筆してくださった川本聡胤さん。キースの楽曲分析研究で博士論文を書いた川本さんならではの、愛情にあふれ、かつ全幅の信頼をおくに足る訳書が誕生しました。

[木村]


西原稔(著)『シューマン 全ピアノ作品の研究 上』(音楽之友社)

西原稔(著)『シューマン 全ピアノ作品の研究 上』(音楽之友社)

弊社刊『クラシックでわかる世界史』『ピアノ大陸ヨーロッパ』の著者・西原稔さんの最新刊。『レッスンの友』誌での連載に加筆・訂正を加えて完成させたもの。シューマンのピアノ作品全50曲を上・下巻で詳細に解説するというもので、シューマン研究の金字塔といえる書です。下巻は6月発売予定とのことです。

[木村]


小沼純一(著)『映画に耳を──聴覚からはじめる新しい映画の話』(DU BOOKS)

小沼純一(著)『映画に耳を──聴覚からはじめる新しい映画の話』(DU BOOKS)

副題にもあるように、たんに「映画音楽」の本というだけでなく、ひろく聴覚と映画の関係をさぐったもの。昔観た映画って、視覚よりも聴覚に記憶として残っていることがありますね。小ぶりな造本も愛らしく、なにげなくそばに置いておきたくなる本です。

[木村]


飯田有抄(構成・解説)『あなたがピアノを教えるべき11の理由』(ヤマハミュージックメディア)

飯田有抄(構成・解説)『あなたがピアノを教えるべき11の理由』(ヤマハミュージックメディア)

『あなたがピアノを続けるべき11の理由』の続編。前巻もそうでしたが、川上昌裕さん、舘野泉さん、播本枝未子さんといったピアニスト、ピアノ指導者だけでなく、福岡伸一さん(生物学者)、小鍛冶邦隆さん(作曲家)、福田成康さん(ピティナ専務理事)といった“異色の”顔ぶれも。相反する主張が語られていたりして、それも面白いです。

[木村]


A. M. エーブル(著)、吉田幸弘(訳)『大作曲家が語る音楽の創造と霊感』(出版館ブック・クラブ)

A. M. エーブル(著)、吉田幸弘(訳)『大作曲家が語る音楽の創造と霊感』(出版館ブック・クラブ)

「霊感」という観点からの作曲家論として話題をよんだ『我、汝に為すべきことを教えん』(春秋社)が、改訳をほどこされ再編集されて再出版されました。アメリカの音楽雑誌の特派員だった著者が19世紀末から20世紀初頭にかけてブラームス、R. シュトラウス、プッチーニ、フンパーディンク、ブルッフ、グリーグといった大作曲家たちと対話をおこなった貴重な記録。「インスピレーション」という微妙な領域に焦点をあてており、著者の宗教観が色濃く反映しているため、ちょっと「色物」的にとられがちな本ではありましたが、作曲家の生の声を伝えているという点では価値ある書物だと思います。

[木村]


林光(著)『現代作曲家探訪記──楽譜からのぞく世界』(ヤマハミュージックメディア)

林光(著)『現代作曲家探訪記──楽譜からのぞく世界』(ヤマハミュージックメディア)

昨年1月に80歳で亡くなった作曲家・林光さんが、1988〜2008年の20年余にわたってヤマハの輸入楽譜・出版情報誌『楽譜音楽書展望』に連載した「楽譜からのぞく世界」「新・楽譜からのぞく世界」をまとめたもの。連載タイトルどおり、ヘンツェ、ノーノ、ヤナーチェクから柴田南雄、武満徹ら著者の同志ともいえる日本の作曲家まで、楽譜を入口として思いをめぐらし、つづったもの。たまにヤマハに行くと、冊子をもらってぱらぱら読んでいたていどなので、それが1冊にまとまったことはほんとうにうれしいことです。題字は林さんと親交のあった平野甲賀さん。

[木村]


津田大介(著)『Tweet & Shout ニュー・インディペンデントの時代が始まる』(スペースシャワー・ネットワーク)

津田大介(著)『Tweet & Shout ニュー・インディペンデントの時代が始まる』(スペースシャワー・ネットワーク)

音楽をメインにしたものとしては牧村憲一さんとの共著『未来型サバイバル音楽論』(2010年)以来となる、『ウェブで政治を動かす!』に続く津田大介さんの新著。音楽をめぐる情報環境やビジネスの変化を分析しながら、インターネットが定着したことによって、ミュージシャンをはじめとするクリエイターたちが「真に独立して活動できる環境が整った」として、「ニュー・インディペンデント」という新しい生き方、活動の方法論を提唱したもの。第一部最後の「音楽のちから」というタイトルが示すとおり、音楽そのものをまず大事にする津田さんらしい愛にあふれた提言がいっぱい。インタビュー形式の記述が多くを占めていて、たいへん分かりやすいので、音楽業界事情に不案内な人にもぜひ読んで欲しい。アジアン・カンフー・ジェネレーションの後藤正文さんとの対談と「これからのためのインターネット年表」も収録。[鈴木]


ピーター・バラカン(著)『ラジオのこちら側で』(岩波新書)

ピーター・バラカン(著)『ラジオのこちら側で』(岩波新書)

昨年インターFMの執行役員に就任、ブロードキャスター(放送する人)としてますます活躍するピーターさんの新刊のテーマは「ラジオ」。ロンドンで過ごした少年期の体験に始まり、70年代以降を暮らす日本での仕事を通じて、愛して止まないラジオの豊かな可能性と未来を語ります。ピーターさんの半生記としても、日本のラジオ業界史としても楽しめる、音楽好きにはたまらない1冊。10年ごとに区切られた全5章にはそれぞれの時代を象徴する10曲が、ピーターさんならではの視点から選ばれています。[鈴木]


菅付雅信(著)『中身化する社会』(星海社新書)

菅付雅信(著)『中身化する社会』(星海社新書)

昨年アルテスより刊行した『はじめての編集』に次ぐ、編集者・菅付さんの書き下ろし新刊。情報が洪水のようにあふれすべての「中身」が可視化される社会。その中で人はどう生きるのか? 膨大な素材を手際よく編集も見事ですが、読者の覚悟を問いながら、自ら「中身化」して生きる著者自身の覚悟が伝わってきて、背筋が伸びます。[鈴木]


円堂都司昭(著)『ソーシャル化する音楽──「聴取」から「遊び」へ』(青土社)

円堂都司昭『ソーシャル化する音楽──「聴取」から「遊び」へ』(青土社)

『ゼロ年代の論点』『ディズニーの隣の風景』などの著書をもつ文芸/音楽評論家・円堂さんの新著は、ソーシャル・ネットワークが発達する2000年代以降の日本のポップ・ミュージックの動向を論じたもの。ロック、Jポップ、アイドル、アニメ・ソング、ボーカロイド、カラオケ、音楽ゲーム、ニコニコ動画、フラッシュモブなど多岐にわたる音楽が、「ガジェット」「キャラクター」「ライヴ」「メディア環境」「音楽『論』」というレイヤーを通じて論じられる。読むのが楽しみです。[鈴木]


中山康樹(著)『ローリング・ストーンズ解体新書』(廣済堂新書)

中山康樹(著)『ローリング・ストーンズ解体新書』(廣済堂新書)

精力的な刊行が止まらない中山康樹さんの最新刊は、ストーンズ本三部作のラスト。デビュー50周年を迎えた怪物バンドを、「ブルース」「モッズ」「プロデューサー」「女たち」など9つのテーマに腑分けして、正体に迫る! 『ローリング・ストーンズを聴け!』『ローリング・ストーンズ全曲制覇』をあわせてどうぞ。[鈴木]


高橋アキ(著)『パルランド──私のピアノ人生』(春秋社)

高橋アキ(著)『パルランド──私のピアノ人生』(春秋社)

ピアニストの高橋アキさん、待望の著書が刊行されました(1/25発売)。1970年初リサイタルと開催してから40余年にわたって、現代音楽を中心に活躍されてきた人生を、ロング・インタビューと、これまでにさまざまな媒体に寄せた原稿を絶妙に配置することで振り返る内容。シューベルト、サティ、フェルドマン、ケージといった作曲家について、夫の故秋山邦晴氏や故武満徹氏ほか身近な人々の思い出、教育・聴衆などについて縦横に語っています。現代音楽に関心のある向きにはもちろん、これから音楽家をめざす若い世代にこそすすめたい一書です。

[木村]


ジュファン(文)、バスタン+エヴラール(写真)/博多かおる(訳)『音楽家の家──名曲が生まれた場所を訪ねて』(西村書店)

ジュファン(文)、バスタン(写真)、エヴラール(写真)/博多かおる(訳)『音楽家の家──名曲が生まれた場所を訪ねて』(西村書店)

この本が届いて、いちばん最初に開けたのは、モーリス・ラヴェルのページ。小柄な作曲家の身体に合わせて、すべてが小ぶりに作られているというモンフォールの「見晴らし台」。意外に質素な概観、几帳面にととのえられ、まさに《こどもと魔法》の舞台になりそうな室内の様子が、建物についてのラヴェルの発言とともに明かされる趣。そのほかにもハイドンからプーランクまで、その音楽がどんな住処から現れたのか、彼らがどんなモノたちに囲まれながら音符を書きつけていたのか、想像をふくらませながら、飽かず一日中眺めていたくなる幸せな本です。19世紀フランス文学の研究者でありながら、ピリスに師事したすぐれたピアニストでもある訳者による美しい翻訳も特筆もの。

[木村]


鈴木英之(著)『よみがえれ!昭和40年代──高度成長期、少年少女たちの宝箱』(小学館101新書)

鈴木英之(著)『よみがえれ!昭和40年代──高度成長期、少年少女たちの宝箱』(小学館101新書)

「テレビ、マンガ、お菓子、おもちゃ、文房具、アイドルタレント、レコード、さまざまな「おまけ」など、昭和40年代の子供達が憧れた118のアイテムを、貴重な写真とともに年代順に紹介する」というもの。著者は1990年代に「ソフト・ロック」ブームを巻き起こした音楽雑誌『VANDA』の同人ライターで、『林哲司全仕事』(音楽之友社)などでもデータにもとづく独自の執筆スタイルで活躍してきた人です。巻末にはフォーリーブス、『マグマ大使』の江木俊夫さんとの対談も収録されています。「あの頃」を懐かしむには格好の書です。

[木村]


熊谷達也(著)『オヤジ・エイジ・ロックンロール』(実業之日本社文庫)

熊谷達也(著)『オヤジ・エイジ・ロックンロール』(実業之日本社文庫)

2004年『邂逅の森』で山本周五郎賞と直木賞を史上初のダブル受賞した著者による「痛快オヤジバンド小説」。解説を、弊社刊『「at武道館(アット・ブドーカン)」をつくった男』の著者・和久井光司さんが書いていますが、たんなる解説にとどまらず、なんと『20世紀少年』などで知られる漫画家の浦沢直樹さんも登場して、「大学のサークル・バンドの真実」を追求する、という興味深い内容になってます。大学でバンドやってたオヤジは必読!です。

[木村]


奥中康人(著)『幕末鼓笛隊──土着化する西洋音楽』〈阪大リーブル037〉(大阪大学出版会)

奥中康人(著)『幕末鼓笛隊──土着化する西洋音楽』〈阪大リーブル037〉(大阪大学出版会)

2008年、サントリー学芸賞に輝いた『国家と音楽──伊澤修二がめざした日本近代』(春秋社)の著者、奥中康人さんの待望の第2弾は、幕末に篠笛とスネアドラムにより編成された西洋式の軍楽隊の誕生とその行く末を描いたもの。廃藩置県により解散した軍楽隊のメンバーたちは、日本全国に散らばり、その音楽はその土地土地で土着化していったそうです。フィールドワークによって、西洋音楽がどのように伝播し、変容していったかを跡づけた労作。

[木村]


樋口隆一(著)『バッハの人生とカンタータ』(春秋社)

樋口隆一(著)『バッハの人生とカンタータ』(春秋社)

わが国のバッハ学の権威、樋口隆一さんの新著は、昨年、NHK文化センター青山教室でおこなわれた連続講義(その後、NHKラジオ第2でも放送)をまとめたもの。一般の聴衆を前にしてのやさしい語り口ながら、氏の長年の研究のエッセンスがつぎ込まれた充実の内容です。とくにカンタータとバッハの生涯を絡み合わせながら語るという手法がすばらしい。バッハの時代、人々に暦や季節の節目を感じさせるものでもあったカンタータをとおして、日常生活のなかのバッハを生き生きと描き出しています。

[木村]


佐々木敦(著)『批評時空間』新潮社

佐々木敦(著)『批評時空間』新潮社

演劇、映画、音楽、文学とジャンルを横断=貫通して旺盛な批評活動を続ける佐々木敦さんの新刊は、月刊『新潮』連載の単行本化。批評家として生きる覚悟を表明したあとがきに胸を打たれる。本編はこれから読みます。[鈴木]


吉成順(著)『知って得するエディション講座』(音楽之友社)

吉成順(著)『知って得するエディション講座』(音楽之友社)

国立音楽大学で音楽社会史を講ずる著者による、エディション研究のエッセンスが本になりました。『ムジカノーヴァ』連載の単行本化。

楽譜における「版」というものを意識するようになったら、避けては通れない数々の問題が、作曲家ごとに手際よくまとめられています。学習者にとっても教師にとっても必携。

[木村]


イーゴリ・ストラヴィンスキー(著)、笠羽映子(訳)『音楽の詩学』(未来社)

イーゴリ・ストラヴィンスキー(著)、笠羽映子(訳)『音楽の詩学』(未来社)

ストラヴィンスキーが1939年から40年にかけてハーヴァード大学でおこなった同名の講義録の全訳。もともとダヴィッド社から1955年に佐藤浩訳で出版されていましたが、そちらは英語版からの重訳。さまざまな版が刊行された経緯については訳者あとがきに詳細にまとめられていますが、今回の翻訳は決定版といっていい2000年刊行の仏語版から翻訳されたものだそうです。

《春の祭典》ほかの初演時のエピソードが示すとおり、「革命児」とみなされてきたストラヴィンスキーですが、以下のような発言には、音楽芸術の本流に自らを位置づける自負があふれています。

……芸術は本質上建設的〔創造的〕なものです。革命は均衡の破壊を伴います。革命とは一時的な混沌(カオス)です。ところで、芸術はカオスとは正反対のものです。芸術がその生き生きとした創造活動において、その実存自体において直接脅かされることなく、カオスに身を委ねることはありません。

本文だけで130ページに満たない掌編ですが、味読に値する重要な著作だと思います。

[木村]


【楽譜】信時潔(作曲)『帰去来 独唱・斉唱・混声四部合唱』(校訂・解説:信時裕子)

北原白秋の最後の詩に信時潔が作曲した《帰去来》の楽譜が出版されました。校訂と解説は信時潔研究家でお孫さんの信時裕子さん。以下、信時さんのブログより。購入方法なども記されています。

[木村]

http://noblogblog.blog.shinobi.jp/Entry/92/

白秋の最後の詩に、信時潔が作曲した「帰去来」の楽譜を出版しました。

「海道東征」の受賞式のため故郷を訪ねることになった白秋が、故郷への思いを込めた詩「帰去来」。
白秋亡き後、詩碑建立の記念式のために信時潔が作曲しました。

混声四部合唱は「フォノシート」になったほかには、
楽譜としては世に出たことが無い、「幻の合唱譜」です。

是非歌ってみてください。

独唱・斉唱、ピアノ伴奏 混声合唱(伴奏は独唱・斉唱と兼用)
楽曲解説、校訂報告 付き、全12ページです。

某社の「合唱曲集」は、厚くて持ちづらく、結局コピーして歌ってしまう、
などという声も聞こえていたので、今回は合唱団員も
片手で持てる重さにしました!

1部320円(別途送料80円)でお届けできますので、ご希望の方はご連絡ください。
   ―――――――――――

『帰去来 独唱・斉唱・混声四部合唱』 
 発 行: JKStairS  
 発行日: 2012年9月10日  
 ※ 校訂・解説: 信時裕子     
  楽譜制作:東京ハッスルコピー   
   (全12ページ)     頒価 1冊320円 (メール便送料別途80円)   

ご希望の場合は下記までご連絡ください。
  (多数ご希望の場合は送料分お安くできます)

連絡先: JKStairS
       メール yn045yk★yahoo.co.jp (★を@に変更してください)
       FAX   020-4622-3032


久保田慶一(著)『西洋音楽史 100エピソード』(教育芸術社)

久保田慶一(著)『西洋音楽史 100エピソード』(教育芸術社)

弊社刊『キーワード150 音楽通論』の編者で、『音楽用語ものしり事典』の著者でもある久保田慶一さんの新しい著書。音楽史を100のエピソードで知るという切り口で、文中にマークのある楽曲はNAXOSミュージック・ライブラリーの特設ページに用意されたサンプル音源を聴くことができます。教育芸術社らしく、学校の先生のネタ帳として便利なつくりですが、一般の音楽ファンにも「へぇ〜」と驚く視点が満載。楽しめます。

[木村]


トレヴァー・ウィシャート(著)、坪能由紀子、若尾裕(共訳)『音あそびするものよっといで』(音楽之友社)

トレヴァー・ウィシャート(著)、坪能由紀子、若尾裕(共訳)『音あそびするものよっといで』(音楽之友社)

1987年に翻訳出版された『音あそびするものよっといで(1)(2)』が、1冊に合わさって改訂・再版されました。こども向けの音楽ゲーム集の体裁をとってはいますが(そして、もちろんそうした場でもちいられることを意図した本ではありますが)、訳者のひとりである若尾裕さんのあとがきにあるように、マリー・シェーファー、コーネリアス・カーデュー、デレク・ベイリーといった、同時期に既存の音楽のあり方を次々に更新しつつあった人たちの活動とならべて語られうる革新性をもつ──若尾さんによれば、音楽の「コミュニケーション的転回」とも表現されうる──ものではないかと思います。「みんなで参加する」時代、ふたたび公刊されるにふさわしい本ではないでしょうか?

[木村]


清水敬一(著)『合唱指導テクニック──基礎から実践まで』(NHK出版)

清水敬一(著)『合唱指導テクニック──基礎から実践まで』(NHK出版)

敬愛する指揮者・清水敬一氏が本を出版! 3月刊行なので、ちょっと時間がたっちゃいましたが、遅ればせながらご紹介。木村も一時期、この人の棒のもとで歌っていたことがあります(ほんのちょびっとですが)。とにかく独特のセンスの音楽と、それにもまして独特のギャグでひっぱってくれる人で、さらに飲み会で披露するテーブルマジックがハンパない(この本にもマジックのやり方が書いてあったりして……)。それはともかく、いまや押しも押されもせぬ合唱界の大物による指導法のハンドブックです。合唱人なら買っておいて損はないでしょう。

[木村]


ロセー、ファブレガス(編)、NPO法人ジストニア友の会(訳)、平孝臣、堀内正浩(監修)『どうして弾けなくなるの?──〈音楽家のジストニア〉の正しい知識のために』(音楽之友社)

ロセー、ファブレガス(編)、NPO法人ジストニア友の会(訳)、平孝臣、堀内正浩(監修)『どうして弾けなくなるの?──〈音楽家のジストニア〉の正しい知識のために』(音楽之友社)

古くはシューマン、最近ではレオン・フライシャーなどが苦しんだことで「音楽家の病気」として有名な「ジストニア」。その正しい理解のためのハンドブックが出ました。

フライシャーがこの病気との苦闘のすえに復活し、リリースしたアルバム『トゥー・ハンズ』は感動的な内容でしたが、そのライナーノートにも、指が動かなくなった原因がわからず、そのことで自分を精神的に追い詰めてしまったことや、他人に理解してもらえない苦しみがつづられていました。こうした書籍で、正しい理解が広がることで、救われる人も多いでしょう。

[木村]


青柳いづみこ(著)『ドビュッシーとの散歩』(中央公論新社)

青柳いづみこ(著)『ドビュッシーとの散歩』(中央公論新社)

紙の質感をそのまま感じられるコーティングなしのカバーと帯、小ぶりな判型(たぶん全書判)、ちょっとレトロなイラスト……。本屋で出会った瞬間に、自宅に連れて帰りたくなるような風情。ピアニストで文筆家の青柳いづみこさんが、ドビュッシーの40のピアノ作品をタイトルにしたエッセイをまとめたもの。本好きと音楽好きの心をくすぐる本です。

[木村]


磯部涼(編著)『踊ってはいけない国、日本』河出書房新社

磯部涼(編著)『踊ってはいけない国、日本 風営法問題と過剰規制される社会』河出書房新社
風営法を根拠とする警察の摘発に揺さぶられるクラブ文化。風営法の歴史や規制の変遷から、「これからも踊り続けるためには」どうしたらよいかまで、知っておくべき/考えるべき論点を丁寧に論じた力作。著者は高橋健太郎、津田大介、松沢呉一、坂口恭平、佐々木中、千葉雅也、開沼博、宮台真司×モーリー・ロバートソンほか。


平野昭(著)『ベートーヴェン(作曲家◎人と作品)』(音楽之友社)

平野昭(著)『ベートーヴェン(作曲家◎人と作品)』(音楽之友社)

「作曲家◎人と作品」シリーズは、木村が音楽之友社在職時代に立ち上げを担当したシリーズです。全24巻の刊行完結をまたず、退職してしまいましたが、残りのラインナップのなかでも「超・大物」作曲家のひとり、ベートーヴェンの巻がめでたく刊行されました(ちなみにもうひとりの未刊の「超・大物」はバッハ)。

全書判というサイズ、文庫版よりひとまわり大きく、新書判の左右幅を少し拡げたくらいのサイズですが、これが「掌(たなごころ)におさまる」というか、読みやすいんです。328頁にぎっしりとつまった文字は、長年ベートーヴェン研究の第一線におられる著者の思索と情熱がぎゅっと凝縮されたもの。ベートーヴェンを聴く人、弾く人、教える人……すべての愛好家にまず1冊目としてすすめたい本です。

[木村]


朝川博、水島昭男(著)『音楽の名言名句事典』(東京堂出版)

朝川博、水島昭男(著)『音楽の名言名句事典』(東京堂出版)

敬愛する編集者で前職場での直接の上司でもあったおふたりによる音楽家の言葉のアンソロジー。

前作『音楽の366日話題事典』(東京堂出版)もそうでしたが、最初から読んでもよし、当てずっぽうでページを開いて目に付くところを読んでもよし。そうだよな、本ってこういう楽しみ方もあったんだと思いながら時を過ごせる、夏休みにはもってこいの1冊です。

もちろんこのおふたりならではの、図版や写真200点余り、年表なども完備した痒いところまで気持ちのゆきとどいたつくりになってます。万人にオススメ!

[木村]


小沼純一(著)『オーケストラ再入門』(平凡社新書)

小沼純一(著)『オーケストラ再入門』(平凡社新書)

弊社刊『無伴奏──イザイ、バッハ、そしてフィドルの記憶へ』の著者でもある小沼純一さんの、ひさしぶりの単著。「つぎはオーケストラについて書きたい」というお気持ちはいつかうかがったことがあり、楽しみにしていましたが、オーケストラを「人が集まって音楽をすること」と再定義しての独自の入門書(サブタイトルが「シンフォニーから雅楽、ガムラン、YMOまで」ですから)。これは興味そそられます。

[木村]


石田一志(著)『シェーンベルクの旅路』(春秋社)

石田一志(著)『シェーンベルクの旅路』(春秋社)

ついに刊行! 石田一志さんが『レコード芸術』で2006年から昨年まで5年間にわたって連載していた「シェーンベルクの旅路」が単行本になりました。石井さんといえば、昨年、やはり春秋社から刊行されたデイヴィッド・コープ『現代音楽キーワード事典』の筆頭訳者でもあり、近年のお仕事の充実ぶりは瞠目すべきものです。

近代西洋音楽を築いた巨匠たちの音楽的精華を総括してその優れた継承者たらんと望みながら、一方では自ら「芸術家の掲げる唯一、最大の目的は自己表現」と言い切って、自己への真実性の追求の結果、ついに近代西洋音楽の最大の特徴であった調性の引力から脱し、不協和音を解放したシェーンベルク。しかも、離脱のうえでなお伝統の継承者としてその特徴を新たに融合し、現代的な協調の可能性を模索し続けたシェーンベルク。その人となりと作品を追ってみたのである。(「あとがき」より)

いまだ近代西洋音楽最大の問題のひとつであるシェーンベルクを知ろうとする者は、まずひもとくべき一書であると思います。

[木村]


アプサラス(編)『松村禎三 作曲家の言葉』(春秋社)

アプサラス(編)『松村禎三 作曲家の言葉』(春秋社)

オペラ《沈黙》などで知られ、2007年に惜しまれながら世を去った日本を代表する作曲家、松村禎三さんの遺稿集がまとまりました。音楽論、作曲論、作品論だけでなく、池内友次郎、伊福部昭、芥川也寸志をはじめとする師、先輩、友人、弟子などを描いた章、俳人としての面のあらわれた俳論、そして自由に書かれたエッセイなど、作曲家・松村禎三と人間・松村禎三との両面を知ることのできるつくりになっています。日本の現代音楽、作曲に関心をもつ人にとっては、必読の書といえるでしょう。

[木村]


ジャン=ミシェル・モルク(著)、藤本優子(訳)『偉大なるヴァイオリニストたち──クライスラーからクレーメルへの系譜』(ヤマハミュージックメディア)

ジャン=ミシェル・モルク(著)、藤本優子(訳)『偉大なるヴァイオリニストたち──クライスラーからクレーメルへの系譜』(ヤマハミュージックメディア)

クライスラー、ブッシュ、エルマン、シゲティをはじめとする歴史的ヴァイオリニスト50人が紹介された本なのですが、なんといってもCD-ROMに収録された音源がものすごい。登場する50人すべての演奏が全65曲、計8時間弱収録されています(目次に記載された「CD-ROMドライブで再生してください」という注意書きに「ん? なんで?」と思いましたが、これはたしかに聴けないわね)。

書籍としてつくられているので、書店(あるいは楽器店)で買うものですが、その内実はむしろCD(それもコンピュータで聴くことを前提とした)。なんとなく時代の流れを感じるつくりの商品ではあります。

CDだったら「ライナーノーツ」にあたるところの書籍。ひとりひとりのヴァイオリニストに充てられたページは短いですが、藤本優子さんのすっきりと読みやすい翻訳がうれしい(『マルタ・アルゲリッチ 子供と魔法』の翻訳もすばらしかった!)。

たとえば「訳者あとがき」がないとか、CD-ROMの収録時間がどこにも記載されてないとか(版元がつくったプレスリリースには書いてある)、なんとなく不親切さを感じさせる本ではありますが、好事家は1冊持っておいてもよろしいんじゃないでしょうか?

[木村]


春畑セロリ(著)『白菜教授のミッドナイト音楽大学』(あおぞら音楽社)

春畑セロリ(著)『白菜教授のミッドナイト音楽大学』(あおぞら音楽社)

作曲家の春畑セロリさんの新刊! ご自身からご案内いただきましたので、メールの文面を引用させていただきます。

架空の島の架空の音楽大学にやってきたズボラな作曲家・白菜漫伍郎が巻き起こす授業風景を小説仕立てでつづるという、いかにもセロリらしいチャラい設定ですが、若い音楽家や指導者の卵のみなさんへの熱いメッセージをこめています。版元もその意図を活かそうと、2色刷という大胆な編集を試みてくださいました。

怪しげな一冊ではありますが、お気に留めていただければ幸いです。アマゾンのサイトはまだ未整理ですが、お買い求めいただけるようになっています。

もちろん、小説家に転身などという野望はさらさらなく、地道に音符を書いておりますので、ご心配なさらぬよう。。。!
どうぞ佳い夏をお過ごしくださいませ。

本を手にとるのが楽しみです!

[木村]


野口卓(著)『飛翔 軍鶏侍』(祥伝社文庫)

野口卓(著)『飛翔 軍鶏侍』(祥伝社文庫)

音楽書じゃなくて時代小説ですが、これまでたいへんたいへんお世話になってきた編集プロダクション「木杳舎(もくようしゃ)」の野口卓さんの新著ということで、ご紹介せずば! 『軍鶏侍』シリーズの3作目?ということになるんでしょうか(間違ってたらすみません)。今回は60枚の短編2作と300枚弱の中編という組み合わせだそうです。本日(6/13)発売。

そして、シリーズ第1作の『軍鶏侍』が、このほど新設された歴史時代作家クラブの第1回新人賞を受賞というめでたいニュースも!

asahi.com - 「歴史時代作家クラブ賞」新設 新人賞に野口卓「軍鶏侍」
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201205310216.html

しかし野口さん、いまあらためてチェックしてみたら、ずいぶんたくさんの著書をお出しになってきたのですね。落語の本にシェイクスピアの本に名前にまつわる新書に……。木杳舎では敏腕編集者として大活躍されているのに、しっかりと著述のための時間も確保されていることに心から敬服します。こんどはセルフ・マネジメント術の本を出していただきたい!

[木村]


安田寛(著)『バイエルの謎──日本文化になったピアノ教則本』(音楽之友社)

安田寛(著)『バイエルの謎──日本文化になったピアノ教則本』(音楽之友社)

よく「バイエルなんかを使っているのは日本だけだ」などと言われます。バイエルというのがドイツの作曲家の名前だということすら知らない人が多いいっぽうで、これほど日本人によく知られたピアノ・メソッドもないでしょう。「日本文化になったピアノ教則本」という副題のとおり、バイエルがいつ、どのようにして、誰によって、日本に紹介され、その後どんな経緯をへて「日本文化になっていったのか」を明らかにするノンフィクション。あの名著『唱歌と十字架』の興奮がよみがえります!

安田さんは現在、そのバイエルを日本に持ち込んだとされるお雇い外国人メーソンによる、日本人への音楽教育の功罪を明らかにするウェブ連載「音痴と日本人」に取り組んでいます。こちらもぜひお読みください。

[木村]


山崎太郎(編集)『クラシックジャーナル046』特集「オペラ演出家ペーター・コンヴィチュニー」

山崎太郎(編集)『クラシックジャーナル046』特集「オペラ演出家ペーター・コンヴィチュニー」

ワーグナーを中心とするドイツ・オペラ研究家、山崎太郎さんが1冊まるごと編集した「コンヴィチュニー本」が登場。演出家個人を特集した雑誌(とはいっても、弊社の『アルテス』と同様、流通上は書籍扱いですが)というのは、寡聞にして知りませんが、ほんとうに「まるごと」すべてコンヴィチュニーに捧げられていて、まさに圧巻。「彼の演出でオペラを観るという体験そのものが、単なる受け身の鑑賞を超え、私たち自身の「存在と認識の根もとを揺さぶり(existentiell)」、心の在り方に何がしかの変容をもたらす切実で根源的な営みにほかならない」(山崎氏の巻末エッセイより)という、この演出家の全貌にせまっています。

[木村]


細川周平(編著)『民謡からみた世界音楽―うたの地脈を探る』ミネルヴァ書房

細川周平(編著)『民謡からみた世界音楽―うたの地脈を探る』ミネルヴァ書房

細川周平さんを中心に日本文化研究センターで進められていた民謡研究プロジェクトがとうとう書籍に。アルテスでぜひやらせていただきたかった、と悔しくなる充実の内容です。詳細な目次はこちらでどうぞ。[鈴木]


和久井光司(著)『放送禁止歌手 山平和彦の生涯』河出書房新社

和久井光司(著)『放送禁止歌手 山平和彦の生涯』河出書房新社

アルテスから発売中の『「at武道館」を作った男』や『フランク・ザッパ/キャプテン・ビーフハート・ディスク・ガイド』『ディランを語ろう』『ザ・ゴールデン・カップスのすべて』『ビートルズ―20世紀文化としてのロック』など、音楽活動と並行して旺盛な著作活動も続ける和久井さんの新著。テーマを決め、取材を重ね、書籍という形で世に問う、という労力のかかる仕事を続けている書き手は、音楽業界では(残念ながら)貴重な存在です。本書は、ひき逃げ事故により不慮の死を遂げたフォーク・シンガーの生涯を追ったドキュメンタリーで、作家の重松清氏さんが推薦しています。[鈴木]


永原恵三(著)『合唱の思考──柴田南雄論の試み』(春秋社)

永原恵三(著)『合唱の思考──柴田南雄論の試み』(春秋社)

面白い切り口です。柴田南雄の人生を簡単に跡づけたのち、最初のシアターピース作品《追分節考》を分析・解説、そしてシアターピースから合唱へと視線を徐々に移し、柴田南雄の音楽性の本質に切り込んでいく──。合唱を「共に生み出す音楽の場」ととらえれば、なるほど柴田南雄が自らの音楽の本質ととらえていたものが見えてくるかもしれません。意欲作だと思います。

[木村]


マーティン・カッツ(著)茂木むつみ・上杉春雄(訳)『ピアノ共演法 パートナーとしてのピアニスト』(音楽之友社)

マーティン・カッツ(著)茂木むつみ・上杉春雄(訳)『ピアノ共演法 パートナーとしてのピアニスト』(音楽之友社)

音楽之友社の亀田さんからのご案内。マリリン・ホーン、フレデリカ・フォン・シュターデ、ホセ・カレーラス、ヤッシャ・ハイフェッツなどの伴奏者として活躍したピアニスト、マーティン・カッツが、伴奏や共演の方法とその魅力を語ったもの。まだ読んでいませんが、昔、ジェラルド・ムーアの本を愛読したものとしては、こちらも期待してしまいます。よい伴奏者はきっとよい言葉をもっているはず。楽しみ。

[木村]


【楽譜】轟千尋『ちいさなピアノ組曲集 ぴあのでものがたり』(音楽之友社)

轟千尋『ちいさなピアノ組曲集 ぴあのでものがたり』(音楽之友社)

音楽之友社の楽譜編集者・槇平さんからのご案内。可愛いイラストと小さな組曲がいくつも詰まった楽譜です。「小さいころの音楽との出会い」として記憶に残りそうな楽譜ですね。

[木村]


長谷川町蔵(著)『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)

長谷川町蔵(著)『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)

『文化系のためのヒップホップ入門』が大ヒット中の長谷川町蔵さん、初の単著は、ロックが流れる映画のガイドブックなわけですが、そこは長谷川さん。ライムスター宇多丸さんも降参する一筋縄ではいかないディープな本になってます。全部で330以上の作品が紹介されていて、「珍作や怪作」も多数。というかメジャーな作品はあんまり出てきません。[鈴木]


若山ゆりこ(著)『スウィート・モロッコ』(辰巳出版)

若山ゆりこ(著)『スウィート・モロッコ』(辰巳出版)

『21世紀中東音楽ジャーナル』のサラーム海上さんのパートナーでもあるイラストレーターの若山ゆりこさんの新刊。『21世紀〜』でも語られているモロッコの魅力が、ポップでカラフルなイラストと写真、文章から伝わってきます。いつか行けるかな〜? [鈴木]


ピーター・フック(著)『ハシエンダ マンチェスター・ムーヴメントの裏側』(イースト・プレス)

ピーター・フック(著)『ハシエンダ マンチェスター・ムーヴメントの裏側』(イースト・プレス)

80年代に席巻したイギリスのマンチェスター・ムーヴメント。その誕生の地であるクラブ「ハシエンダ」のストーリーを、ニュー・オーダーのピーター・フックが書き下ろした! ニュー・オーダーよりジョイ・ディヴィジョンに思い入れのあるほうですが、これは読まねば。[鈴木]


児玉雄大(編)『Shall We ダンス?――3・11以降の暮らしを考える』(メディア総合研究所)

児玉雄大(編)『Shall We ダンス?――3・11以降の暮らしを考える』(メディア総合研究所)

千葉県長生郡で絵本とカレーの店を営む傍ら雑誌『K8』を発行している児玉さんの編集。毛利嘉孝、二木信、こだま和文、磯部涼、Likkle Mai+RUMI、平井玄、鈴木孝弥、気流舎ほかが寄稿/対談/インタビューで登場。[鈴木]


大谷能生(著)『植草甚一の勉強 1967-1979全著作解題』(本の雑誌社)

大谷能生(著)『植草甚一の勉強 1967-1979全著作解題』(本の雑誌社)

1972年生まれの大谷さんが、J・Jこと植草甚一の全著作解題に挑んだ労作。晶文社のサイトでの連載をもとに書き下ろしたものだそうだ。津野海太郎さんによる評伝『したくないことはしない』と合わせてお薦めします。[鈴木]


早川義夫(著)『ラブ・ジェネレーション』(文遊社)

早川義夫(著)『ラブ・ジェネレーション』(文遊社)

元ジャックス、元「本屋のおやじさん」早川義夫さんが1972年に出した名著の新版。初めて単行本に収録されるエッセイ7本と未公開写真が追加されている。シモキタ仲間・くーにゃんの仕事です。解説は中川五郎さんの書き下ろし。[鈴木]


アンドレ・シェフネル(著)/山内里佳(訳)『ドビュッシーをめぐる変奏──印象主義から遠く離れて』(みすず書房)

アンドレ・シェフネル(著)/山内里佳(訳)『ドビュッシーをめぐる変奏──印象主義から遠く離れて』(みすず書房)

今年はドビュッシー生誕150年。これからもいろんな「記念出版」があるものと思いますが、こんなに重要な文献が翻訳されずに残っていたとは!──シェフネルは「フランス民族学において初めて音楽を研究対象とした人物」(訳者あとがき)とありますから、文化人類学者、民族音楽学者とするのが妥当なのだと思いますが、西洋音楽学者としても第一線で活躍した人で、とりわけヴァーグナー、ストラヴィンスキーなどの研究、そして親交のあったブーレーズと交わした書簡集(『ブーレーズ‐シェフネール書簡集1954‐1970』音楽之友社)などでも知られる人です。この本は彼が生涯愛したドビュッシーにかんする論考を集めたものです。「作曲家の心を、恐怖の風が吹き抜ける」──帯の惹句に心穏やかでいられません。

[木村]


『音盤時代の 音楽の本の本──グレートハンティング・オブ・ミュージックブック』(カンゼン)

『音盤時代の 音楽の本の本──グレートハンティング・オブ・ミュージックブック』(カンゼン)

昨年創刊され、注目度急上昇中の音楽雑誌『音盤時代』から「音楽書のレビュー集」が出ました。編集長の浜田淳さんが好奇心で湯浅学さんや佐々木敦さんに迫り、高橋悠治さん、高橋健太郎さん、大谷能生さん、若尾裕さんなどなど手練れの「読み手」たちから「音の聞き方が変わった本」の告白を引き出し、そして硬軟とりまぜて200冊のブックレビューを詰めこんで、「音楽書の悦楽」にあふれた1冊ができあがりました。木村も200冊のうち11冊を担当しています。オススメ!

[木村]


岡田暁生(著)『楽都ウィーンの光と陰──比類なきオーケストラのたどった道』(小学館)

岡田暁生(著)『楽都ウィーンの光と陰──比類なきオーケストラのたどった道』(小学館)

小学館のCDマガジン『ウィーン・フィル 魅惑の名曲』に連載されていた「ウィーン・フィルをめぐる断章」が単行本になりました。ウィーンの街案内からそろそろとウィーン・フィルの歴史へと誘う心憎い構成。1章1章が独立したエッセイにもなっていて、とても読みやすい。そしてなによりも、岡田さんの読解により、いままで見えてこなかったウィーンとウィーン・フィルの真の姿が描き出されていくさまがスリリングです。

[木村]


久保田慶一(編)『バッハ キーワード事典』(春秋社)

久保田慶一(編)『バッハ キーワード事典』(春秋社)

弊社刊、『キーワード150 音楽通論』の編者で、『音楽用語ものしり事典』の著者でもある久保田慶一さんが編者をつとめた新刊書。全42章・200節に420項目のキーワードと300の人名が解説された、まさに「バッハを知るための究極の総合ガイド」。執筆は久保田さんのほか江端伸昭さん、尾山真弓さん、加藤拓未さん、堀朋平さんと気鋭の学者が勢揃い。これで3500円は安い! おすすめです。

[木村]


岩崎真、岩下哲也、田原靖彦、中村俊一(著)『音と響きの基礎知識──音楽にたずさわるすべての人々へ』(音楽之友社)

岩崎真、岩下哲也、田原靖彦、中村俊一(著)『音と響きの基礎知識──音楽にたずさわるすべての人々へ』(音楽之友社)

自分たちに合った演奏会場をどう選ぶか、練習場の空間をどう使えばよい練習ができるのか、ピアノのレッスンを録音するとき、レコーダをどこに置けばいいのか……などなど、プロ/アマ問わず、役に立つ知識満載の本。『バンド・ジャーナル』で2007〜2008年に連載された記事をベースに、音楽の演奏・練習の現場で役に立つ音響学の基礎知識を、作曲、音響技術、音響設計、音響学などの専門家4名がそれぞれの知見をもちよってまとめた信頼できる入門書です。

木村が音楽之友社にいたころに種まきした企画で、ようやくかたちになり、感慨深いです。『バンド・ジャーナル』編集部の赤井さん、アンカーをつとめてくださった音友出版部の斎藤さんに感謝。

[木村]


丸山桂介(著)『バッハ 「聖なるもの」の創造』(春秋社)

丸山桂介(著)『バッハ 「聖なるもの」の創造』(春秋社)

ベートーヴェンやバッハを一貫してドイツ精神史、キリスト教精神史のなかでとらえ、あくまでも実証的な研究で独自の地歩を築いてきた丸山さんの新著。こんども390頁を超える大冊。加えて、臼井雅美さんのクラヴィコード演奏による《15のインヴェンションとシンフォニア》のCDも付いてます。お休みにじっくりと読みたい1冊。

[木村]


山田奨治(著)『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』人文書院

山田奨治(著)『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』人文書院

各種利益団体が跋扈する審議会の内実をヴィヴィドかつ鋭く批判的に追った第4章をはじめ、「著作権を厳しくし過ぎることには反対の立場」から書かれた、当たり障りのありまくる痛快な一冊。著作権を巡る数々の入門書・研究書の中で、最初に読む本としてもお薦め。[鈴木]


橋本英二(著)『バロックとその前後の鍵盤音楽の運指法──便利で合理的な弾き方を演奏実践に生かす』音楽之友社

橋本英二(著)『バロックとその前後の鍵盤音楽の運指法──便利で合理的な弾き方を演奏実践に生かす』音楽之友社

2005年に刊行された『バロックから初期古典派までの音楽の奏法』(音楽之友社)の続編がついに出版されました! 著者の橋本英二さんはチェンバロ奏者でシンシナティ大学名誉教授。長くアメリカを拠点に演奏・教育活動を続けてこられた方です。

前作は木村が音楽之友社時代に編集担当しましたが、とにかく執筆・校正における緻密さと誠実さ、そして粘り腰は、いままでにお付き合いした著者のなかでもトップクラス。そして前作の途中までは、原稿も楽譜もすべて手書きでしたから、とにかく時間がかかりましたが、そのかいあって、それまでに類をみない包括的で実用的な概説書ができたと思います。

第2作もそれに優るとも劣らない実質的な内容。チェンバロ奏者だけでなく、バロック音楽に専門的な関心をもつすべての人にお薦めしたい本です。

[木村]


湯浅学(著)『音楽が降りてくる』河出書房新社

湯浅学(著)『音楽が降りてくる』河出書房新社

聴いている音楽の幅の広さ、量と聴き方の質では右に出る者のきわめて少ない音楽評論家・湯浅学さんの新著。さまざまな媒体に発表してきたテキストを編んだもの。こういう本を出せる数少ないおひとりですね。ぼくも1冊企画あるんだけど、いつやれるかなあ^^;。[鈴木]


吉田秀和(著)『言葉のフーガ 自由に、精緻に』四明書院

吉田秀和(著)『言葉のフーガ 自由に、精緻に』四明書院

吉田秀和さんの「全集」といえば、もちろん全24巻の白水社版ですが、今回出版された四明書院の『言葉のフーガ』はまさに「1冊で全集」といいたくなる本。600ページを超すヴォリュームで、なんと2400円。内容は作曲家論、作品論、演奏家論、美術論など、吉田さんの批評の全体像を伝え、なおかつ詳細な年譜と著作目録付き。最近は「吉田秀和論」が雑誌の特集をにぎわす時代でもありますが、これからは「まず四明書院版、それから白水社版」という流れで読みすすむのがよいのではないかと。

[木村]


ゲルハルト・マンテル(著)久保田慶一(訳)『楽譜を読むチカラ』音楽之友社

ゲルハルト・マンテル(著)久保田慶一(訳)『楽譜を読むチカラ』音楽之友社

「楽譜を読む」ということをテーマに、ありとあらゆる面からアプローチした本。たとえば、「楽譜は直観で読むのか、頭脳で読むのか?」といった、演奏家ならずとも興味ひかれる内容です。

[木村]


ヴェロニク・ピュシャラ(著)、神月朋子(訳)『ブーレーズ ありのままの声で』(慶應義塾大学出版会)

ヴェロニク・ピュシャラ(著)、神月朋子(訳)『ブーレーズ ありのままの声で』(慶應義塾大学出版会)

著者であるピュシャラとブーレーズが、フランスのラジオ番組用に収録した対談を下敷きとしている。書籍化にあたり、対談形式ではなく、ピュシャラによるブーレーズ伝ともいえるような内容に書きかえたということで、とても読みやすい。ブーレーズは、自身による著作も多いけれど、他人の視点で見ると、より輪郭がはっきりすることもある、ということをあらためて感じます。ブーレーズの音楽性・人間性・生涯のあらましを知りたいという向きには最初の1冊としてオススメです。


加藤典洋(著)『小さな天体──全サバティカル日記』新潮社

加藤典洋(著)『小さな天体──全サバティカル日記』新潮社

アルテスから7月に刊行した音楽論集『耳をふさいで、歌を聴く』、『村上春樹の短編を英語で読む1979-2011』講談社に続く加藤典洋さんの新刊。2010年春からコペンハーゲンとサンタバーバラで過ごしたサバティカル生活の日記で、後半には『耳をふさいで、歌を聴く』を執筆しているときの様子がしばしば出てくるので、緊張しながら読んでいます。

[鈴木]


石橋毅史(著)『「本屋」は死なない』新潮社

石橋毅史『「本屋」は死なない』新潮社

出版業界紙「新文化」の前編集長による書き下ろし。“「本屋」についての、ごく個人的な見聞録である”。創業時から贔屓にしてくださっているちくさ正文館の古田さん、定有堂書店の奈良さんをはじめ、アルテスがお世話になっている書店員さんも登場。森達也さんのノンフィクションを彷彿とさせる叙述スタイルが魅力的です。

[鈴木]


『ユリイカ』2011年11月号 特集=やくしまるえつこ

『ユリイカ』2011年11月号 特集=やくしまるえつこ(青土社)

相対性理論のやくしまるえつこを特集した最新号。読み応えありすぎ。初めてアルテスの広告を出しました。

[鈴木]


中山康樹(著)『黒と白のジャズ史』平凡社

中山康樹(著)『黒と白のジャズ史』平凡社

9月の『ジャズ・ヒップホップ・マイルス』に続く中山康樹さんの新刊。“定説を超えた、新たなジャズとブルーノートの歴史が明らかに!” ものすごい生産量で読むのが追いつきませんが、“ブルーノート名盤50紹介付き”です。

[鈴木]


大友良英(著)『クロニクルFUKUSHIMA』青土社

大友良英(著)『クロニクルFUKUSHIMA』(青土社)

8月15日の“フェスティバルFUKUSHIMA!”開催後、ものすごいスピードで刊行された単行本。主催の遠藤ミチロウ、和合亮一さんほか坂本龍一、木村真三、宇川直宏といった人たちと大友さんの対談と、大友さんの日記が収録されてます。季刊『アルテスVol.1』もぜひ合わせてお読みください。

[鈴木]


【11/29発売】戸ノ下達也(編・解題)『音楽文化新聞』(全三・別巻)(金沢文圃閣)

戸ノ下達也(編・解題)『音楽文化新聞』(全三・別巻)(金沢文圃閣)

1941年11月に組織され、戦時下の音楽界を一元的に組織した「日本音楽文化協会」の機関誌が、後継誌である『音楽文化協会会報』とともに、創刊より70年をへて復刻されます。戦時期の音楽文化を研究する人々にとって欠かすことのできない資料といえるでしょう。12/3(土)には片山杜秀さんと編者の戸ノ下達也さん、ピアニストの藤岡由記さんによる鼎談とミニ・コンサート「『音楽文化新聞』の時代」が開催されます(14:00開演、亀戸文化センター大研修室、主催:洋楽文化史研究会)。

[木村]


デイヴィッド・コープ(著)、石田一志他(訳)『現代音楽キーワード事典』(春秋社)

デイヴィッド・コープ(著)、石田一志他(訳)『現代音楽キーワード事典』(春秋社)

おおげさでなく、これ1冊で20世紀以降の音楽のあらましがわかる好著。「電子音響音楽」「アルゴリズム作曲」にもそれぞれ1章があてられているのがうれしい。

[木村]


小宮正安(著)『オーケストラの文明史 ヨーロッパ三千年の夢』(春秋社)

小宮正安(著)『オーケストラの文明史 ヨーロッパ三千年の夢』(春秋社)

オーケストラがその語源からして「境界」という性格をにない、それゆえ「ボーダーとボーダーレスのありかたを巡って、ヨーロッパの連綿たる歴史、さらにはそれが培ってきたメンタリティを映し出す鏡」だという、歴史家ならではの巨視的な視座が魅力的。「文明史」というのはけっして大風呂敷ではありません。

[木村]


ピーター・バラカン(著)『ピーター・バラカンの音楽日記』集英社インターナショナル

ピーター・バラカン(著)『ピーター・バラカンの音楽日記』集英社インターナショナル

弊社刊『魂(ソウル)のゆくえ』でおなじみ、ピーター・バラカンさんの久しぶりの新刊が出ます。今はなき『月刊プレイボーイ』誌の連載を追加・再構成して単行本化したもので、2002年秋から2008年暮れまでの音楽体験日記です。135枚のディスクが掲載されていて、CDガイドとして買い物のお伴にもどうぞ。[鈴木]


中山康樹(著)『ジャズ・ヒップホップ・マイルス』NTT出版

中山康樹(著)『ジャズ・ヒップホップ・マイルス』NTT出版

旺盛な執筆活動を続ける中山さんの最新作は、「マイルスにとってヒップホップは新しいものではなく、過去に通過したものにすぎなかった」という視点から、ジャズとヒップホップの関係を考察、黒人音楽史を再検証する!という意欲作です。[鈴木]


エーファ・ヴァイスヴァイラー(著)明石政紀(訳)『オットー・クレンペラー』(みすず書房)

エーファ・ヴァイスヴァイラー(著)明石政紀(訳)『オットー・クレンペラー』(みすず書房)

みすず書房の島原さんからのご案内。訳者あとがきにある「梃子でも動かない抽象的岩石が呼吸をしているような動感」というクレンペラーの音楽の印象そのままのようなたたずまいの本です。

[木村]


大里俊晴(著)『ガセネタの荒野』月曜社

大里俊晴(著)『ガセネタの荒野』月曜社

本をいただいて、ぱらぱらとめくり、目に付いた文章を読みはじめて、「読まなきゃよかった」と思いました。そんな禍々しい力の横溢する本。

[木村]


オリヴィエ・ベラミー(著)/藤本優子(訳)『マルタ・アルゲリッチ──子供と魔法』音楽之友社

オリヴィエ・ベラミー(著)/藤本優子(訳)『マルタ・アルゲリッチ──子供と魔法』音楽之友社

アルゲリッチ初の伝記。全22章に、ブエノスアイレスから始まりパリ、ニューヨーク……とすべてアルゲリッチが生涯に駆け抜けた都市の名前が冠されていて、全体として「断章」のスタイルをとっています。「ああ、この人の生涯は断章で語られるのがふさわしいのだな」と妙に納得。日本語訳もとても読みやすいです。

[木村]


河本真理(著)『葛藤する形態──第一次世界大戦と美術』(レクチャー第一次世界大戦を考える)人文書院

河本真理(著)『葛藤する形態──第一次世界大戦と美術』(レクチャー第一次世界大戦を考える)人文書院

人文書院のこのシリーズは、岡田暁生さんの『「クラシック音楽」はいつ終わったのか?』をはじめ、山室信一さん久保昭博さんほか、かずかずの力作がすでに刊行されていますが、ようするに「現代文化への影響ということを考えた場合、第二次世界大戦よりもむしろ第一次世界大戦に焦点をあてたほうが理解しやすいのではないか」という視点で編まれたシリーズなのだと思います。

[木村]


黒田晴之(著)『クレズマーの文化史──東欧からアメリカに渡ったユダヤの音楽』人文書院

黒田晴之(著)『クレズマーの文化史──東欧からアメリカに渡ったユダヤの音楽』人文書院

人が旅すれば音楽も旅をする──そんなあたりまえのことを実感させてくれる1冊。

[木村]


戸ノ下達也・横山琢哉(編著)『日本の合唱史』青弓社

戸ノ下達也・横山琢哉(編著)『日本の合唱史』青弓社

高校から大学、社会人になっても数年間合唱に首を突っ込んでいたキムラにとっては、ツボの1冊。合唱の本って、だいたいが「思い出話」なんですが、本書はちがいます。編者のひとり、戸ノ下さんはいわゆる「合唱人」ではなく、日本の近代音楽史研究者。歴史研究のプロによる記述と、関係者の回想が絶妙のバランスで同居している本です。

[木村]


佐藤剛(著)『上を向いて歩こう』岩波書店

佐藤剛(著)『上を向いて歩こう』岩波書店

世に出て今年でちょうど50年、坂本九の歌でアメリカでも大ヒットした「上を向いて歩こう」の歴史と音楽的な意義を、多くの関係者の証言や資料を参照しながら書き下ろしたドキュメンタリー。連載されていたジブリの雑誌「熱風」を、これ読みたさに購読しはじめたぐらいで、とにかく無類に面白いです。坂本九の歌い方がまぎれもないロックンロールであることを証した章などじつにスリリングだし、テンポのよい筆致もすばらしいです。著者の佐藤さんはザ・ブームなどを擁する音楽事務所ファイブ・ディーの代表。[鈴木]


大村恵美子・大村健二(編)『バッハ コラール・ハンドブック』春秋社

大村恵美子・大村健二(編)『バッハ コラール・ハンドブック』春秋社

春秋社の高梨さんからご案内いただきました。「バッハのコラール全154曲を日本語で歌う」というコンセプトで、1曲につき見開き2ページ、対訳と楽譜を掲載した本です。この困難な時代への贈り物のように感じられる本、みなさんにおすすめします。

[木村]


中山康樹(著)『マイルス・デイヴィス『アガルタ』『パンゲア』の真実』河出書房新社(3月23日発売)

中山康樹(著)『マイルス・デイヴィス『アガルタ』『パンゲア』の真実』河出書房新社(3月23日発売)


1975年、大阪フェスティバル・ホールでライヴ録音された名盤『アガルタ』『パンゲア』の成立過程を追ったドキュメント。『マイルス・デイヴィス 青の時代』以下新書によるマイルス5部作に続く中山康樹さんの書き下ろし。当時のCBSソニー・ディレクター=中村慶一、レコーディング・エンジニア=鈴木智久、デザイナー=横尾忠則の証言も収められている。[鈴木]


高護(著)『歌謡曲──時代を彩った歌たち』(岩波新書)

高護(著)『歌謡曲──時代を彩った歌たち』(岩波新書)


ウルトラ・ヴァイヴの高護さんが、60、70、80年代の歌謡曲の世界を紹介、探求した書き下ろし。序章で戦前と終戦直後に簡単に触れたあと、各ディケイドを「和製ポップスへの道」「歌謡曲黄金時代」「変貌進化する歌謡曲」と題して、曲単位でたどっていく。巻末の主要楽曲リスト(兼索引)を見ると、1959年の水原弘「黒い花びら」、守屋浩「ぼくは泣いちっち」に始まり、1988年の男闘呼組「DAYBREAK」、Wink「愛が止まらない」、1989年(美空ひばり「川の流れのように」)までが載ってます。歌謡曲、っていうのもなかなか難物ですよね。高さんがはたしてどんな風に料理しているか。[鈴木]


川崎大助(著)『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』河出書房新社

川崎大助(著)『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』河出書房新社


デビュー前からバンドをよく知る著者によるフィッシュマンズ・ストーリー。雑誌『米国音楽』の連載をもとにしたもので、「ひじょうに個人的な思いから書き始めた」と自ら語るとおり、身近にいた人間ならではの共感と感傷がひたひたと伝わってきて、完全に遅刻してしまったリスナーとしては、現場のドキュメントとして楽しませてもらっている。それにしても改めて、佐藤伸治はなぜあんなに早く世を去ってしまったんだろう? もう少し距離を置いた評伝を読みたくもなった。[鈴木]


リロイ・ジョーンズ(著)飯野友幸(訳)『ブルース・ピープル──白いアメリカ、黒い音楽』平凡社ライブラリー

リロイ・ジョーンズ(著)飯野友幸(訳)『ブルース・ピープル──白いアメリカ、黒い音楽』平凡社ライブラリー


2004年に音楽之友社から刊行された完全新訳が平凡社ライブラリーで復刊。音楽之友社版の売り切れを喜びつつ、絶版状態をなんとかしたかった担当編集者としては嬉しいかぎりです。1963年の初版は1965年に上林澄雄訳で音楽之友社から翻訳出版されてるんですが、紹介されるたびに「翻訳が悪い」と書かれていたのが気になっていました。ピーター・バラカンさん→研究社・金子さんを通じて上智大の飯野友幸さんをご紹介いただき、1999年版の新訳をお願いしたのでした。この歴史的な古典を、正確かつ読みやすい翻訳でぜひご一読ください。[鈴木]


藤原ちから+辻本力(編著)『〈建築〉としてのブックガイド』明月堂書店

藤原ちから+辻本力(編著)『〈建築〉としてのブックガイド』明月堂書店

下北沢のフリーペーパー「路字」や「エクス・ポ」の編集で活躍している藤原さんと水戸芸術館の機関誌「WALK」の編集者だった辻本さんの企画、東京ピストル・加藤賢策さんのデザインによる、コンセプチュアルなブックガイド。「門」から「船着き場」(!?)まで26のパートに分かれて取り上げられている本は、文学から思想書、マンガまでさまざま。書き手には吉祥寺「百年」の樽本さん、大谷能生さん、ジュンク堂新宿店の阪根正行さん、作家の福永信さんも。折り返されたカヴァーの裏側の文字が表にちょこっと覗いてるのは意図したもの?[鈴木]


レコード芸術(編)『クラシックCD 20世紀の遺産 探訪・1950〜1999年』音楽之友社

レコード芸術(編)『クラシックCD 20世紀の遺産 探訪・1950〜1999年』音楽之友社(ONTOMO MOOK)


歴史的な遺産を産んだ50年代、レコード文化が花開いた60年代、隆盛をきわめた70年代、デジタル時代を迎えた80年代、そして爛熟の90年代と、レコードに刻まれた演奏を軸にクラシック音楽の半世紀をたどったムック。『レコード芸術』誌の連載を新たに編集したもので、吉田秀和、小林利之ら多彩な顔ぶれによるインタビューや寄稿、詳細な年表、各種コラムなどがぎっしり誌面を埋め尽くしていて、老舗専門出版社ならではの底力が伝わってきます。インターネットに大きく揺さぶられている録音文化を振り返る意味でも手元に置いておきたい1冊。[鈴木]


加藤浩子(著)『ようこそオペラ! ビギナーズ鑑賞ガイド』春秋社

加藤浩子(著)『ようこそオペラ! ビギナーズ鑑賞ガイド』春秋社

春秋社の高梨さんからご案内いただきました。ちょうど10年前に刊行された『今夜はオペラ!』の続編。「ビギナーズ鑑賞ガイド」という副題どおり、オペラ入門書の「王道」ともいえるような構成の本ではありますが、随所に「使える本」という印象があるのは、すべての記述が著者の実体験にもとづく現場の知恵にあふれているからでしょう。おすすめです。

[木村]


関口義人(著)『ジプシーを訪ねて』岩波新書

関口義人(著)『ジプシーを訪ねて』岩波新書


国を持たぬ民、ジプシーの集住地を精力的に取材して回っている関口義人さんが、その10年の旅の記録をつづった新著が岩波新書から発売されました。ヨーロッパのみならず、2004年からはアラブ諸国にも足を伸ばしている関口さんのジプシーにかける情熱は尋常ではありません。なぜそこまでのエネルギーを注ぐのか、ぼくも常々知りたかったその謎が書かれてるのでは、という期待を持って読み進めているところです。[鈴木]


松原弘一郎ほか著『日本革命ロックガイド―1960-2010』design studio STUDS

松原弘一郎ほか(著)『日本革命ロックガイド1960-2010(MOBSPROOF別冊2)』design studio STUDS
60年代のGSからゆらゆら、ミドリ、ロボまで50年近い日本のロック史を一望するディスクガイド。枚数は明記されてないけど350枚ぐらい? 毛皮のマリーズ・志磨遼平×吉田豪ほか柴山俊之、中川敬、向井秀徳などのインタビューも。タワーレコード限定販売。ほおほおこういうのが若い人には評価されるのね的に楽しんでます^^。[鈴木]


浅川マキほか(著)田村仁(写真)『ロング・グッドバイ──浅川マキの世界』白夜書房

浅川マキほか(著)田村仁(写真)『ロング・グッドバイ──浅川マキの世界』白夜書房


『日本のロック&フォーク・アルバム大全1968-1979』というムックを作ったとき、発売後しばらくして会社に「浅川と申しますが…」と低い声の電話がかかってきました。まさかまさかの浅川マキさんご本人でした。ドキッとしましたが、伊達政保さんが書いた『浅川マキの世界』の内容に「感謝したい」とわざわざご連絡をくださったのです。その後ピットインのライヴにぼくも招んでいただき、ご挨拶しました。忘れられない想い出です。[鈴木]


和久井光司(著)『フランク・ザッパ/キャプテン・ビーフハート・ディスク・ガイド(レコード・コレクターズ増刊)』ミュージック・マガジン

和久井光司(著)『フランク・ザッパ/キャプテン・ビーフハート・ディスク・ガイド(レコード・コレクターズ増刊)』ミュージック・マガジン


作家の重松清さんにも高く評価された弊社刊『「at武道館」をつくった男』の著者でもあるミュージシャン/音楽評論家の和久井光司さんが、ザッパとビーフハートおよび関連人脈すべてのディスクを書き下ろしたオール・カラーのガイドブック。これほど短期間にこれほどの量と質の原稿を書き下ろせるのは和久井さんだけでしょう。これを片手にわが家のCD棚をずいぶん占領しているザッパを順番に聞き直したりしてみたい。[鈴木]


アレックス・ロス(著)柿沼敏江(訳)『20世紀を語る音楽1&2』みすず書房

アレックス・ロス(著)柿沼敏江(訳)『20世紀を語る音楽1&2』みすず書房


Twitterで呟いたりはしてたんですが、こちらでのご紹介が遅くなりました。アルテスで出したかった!という待望の翻訳書の刊行です。なかなか時間が取れなくてぜんぜん読み終わってはいないんですが、翻訳の質も高いし、とっつきやすいとはいいがたい20世紀音楽(いわゆる現代音楽に限定してるわけではない)の歴史が物語としておもしろく読めて、大いにお薦めします。[鈴木]
※リンクは『1』に張ってあります。


岡田暁生(訳・解題)『ツェルニー ピアノ演奏の基礎』春秋社

岡田暁生(訳・解題)『ツェルニー ピアノ演奏の基礎』春秋社

「古典派/ロマン派のピアノ演奏の百科事典」(岡田暁生氏による「解題」より)とも位置づけられる書の待望の邦訳。とくに「歴史家としてのツェルニー」という面に興味をもちました。ツェルニーを教えたり学んだりする人たちにも、音楽史に関心のある向きにもおすすめします。

[木村]


野田努(著)『もしもパンクがなかったら』メディア総合研究所

野田努(著)『もしもパンクがなかったら』メディア総合研究所


DOMMUNEの中にあるウェブ版『ele-king』編集長の野田努さんの、『EYESCREAM』誌での連載をまとめた時評集。ちょうど紙版が復活したばかりの『ele-king』ですが、ウェブ版での連載も毎回楽しみにしてます。[鈴木]


ルース・タトロー(著)森夏樹(訳)『バッハの暗号』青土社

ルース・タトロー(著)森夏樹(訳)『バッハの暗号』青土社


“天才の楽譜は神なる「数」の証明だったのか?”“バッハはほんとうに数象徴を操って作曲したのか?”という帯のコピーには心惹かれます。[鈴木]


釣谷真弓(著)『音の歳時記──四季折々の日本音楽』東京堂出版

釣谷真弓(著)『音の歳時記──四季折々の日本音楽』東京堂出版

アルテス刊『八橋検校 十三の謎』の著者、釣谷真弓さんの新著。北國新聞に「ふるさと音紀行」と題して2009年から毎週連載されたエッセイをまとめたもの。季節にちなんだ日本音楽のあれこれを、豊富な写真と滋味あふれる文章で紹介した、とても気持ちのよい本です。

[木村]


大里俊晴(著)『マイナー音楽のために──大里俊晴著作集』月曜社

大里俊晴(著)『マイナー音楽のために──大里俊晴著作集』月曜社

2009年11月に亡くなった音楽学者/ミュージシャン、大里俊晴氏の評論集。追悼文集『役立たずの彼方に 大里俊晴に捧ぐ』を作られた渡邊未帆さんからご恵贈いただきました。編集は須川善行さん、解説が細川周平さん。内容にふさわしいひじょうにシャープで美しい本です。[鈴木]


椎名亮輔(著)『狂気の西洋音楽史──シュレーバー症例から聞こえてくるもの』(岩波書店)

椎名亮輔(著)『狂気の西洋音楽史──シュレーバー症例から聞こえてくるもの』(岩波書店)

著者の椎名亮輔さんからご恵贈いただきました。前著、『音楽的時間の変容』(現代思潮新社)は、現代音楽の「時間」を精神分析の手法で解き明かそうとする試みでしたが、こんどは西洋音楽史全体を視野に入れ、フロイトの手がけた一症例から「作曲家の狂気」を露わにしていこうという刺激的な書です。

[木村]


明石政紀(著)『ベルリン音楽異聞』(みすず書房)

明石政紀(著)『ベルリン音楽異聞』(みすず書房)

みすず書房の島原さんよりのご紹介。ドイツのロック音楽(クラフトワークなど)や第三帝国時代の音楽についての著述や翻訳で知られる明石政紀さんの新著。2004年から05年にかけて『クラシック・ジャーナル』に寄稿されたものを骨子に、いくつかの文章を加え、さながら音楽をテーマとしたドイツ現代史点描といった趣でまとめた1冊です。

[木村]


片山杜秀(著)『ゴジラと日の丸──片山杜秀の「ヤブを睨む」コラム大全』文藝春秋

片山杜秀(著)『ゴジラと日の丸──片山杜秀の「ヤブを睨む」コラム大全』文藝春秋
※Amazonリンクができたら張りますね。

ついに!──という感慨でいっぱいです。

片山杜秀さんが1994年から2002年まで『週刊SPA!』(扶桑社)で発表した連載コラム「ヤブを睨む」が、全576頁の本になってドドーンと復活しました!(1991〜1993年に同誌に発表された単発コラムというおまけ付きで!) つねに「あの伝説の」という枕詞付きで語られるこの連載が、やっと日の当たるところに戻ってきたわけです。やー、めでたい!

内容はこれからちびちびと楽しみながら読ませていただくつもりですが、ひとつだけ。あとがきは「ぼくの『SPA!』時代」と題されていますが、そうなんですよね〜、このころ片山さんは「ぼく」(あるいは「ボク」)という一人称を使っておられたんでした。懐かしい!

とにもかくにも、2010年もあとわずか、というときに、文句なしに「今年の収穫」の第1位に躍り出たこの本。出会う人みんなに奨めてしまいそうです(笑)。

[木村]


片山杜秀責任編集『ラチオ SPECIAL ISSUE 思想としての音楽』講談社

別冊「本」ラチオ SPECIAL ISSUE 思想としての音楽


アルテスがお世話になっている書き手がたくさん登場することもあって待ちに待ってました。片山さんと菊地成孔さんの対談に始まり、大和田俊之さんの「〈黒さ〉論」、沼田順さん@doubtmusicの即興音楽論などなど、他にも斎藤完さん、谷口文和さん、渡邊未帆さん、輪島裕介さんと力のこもった論考ばかりで大いに刺激されてます。インド、アフリカ、イラン、日本、古楽、ガムランの専門家たちが一堂に会した「『いい音』は普遍か? 近代西洋音楽の外側から」も個人的関心にドンピシャでワクワク。かなり「悔しい」1冊でもあります。[鈴木]


輪島裕介(著)『創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史』光文社新書

創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史 (光文社新書)


こういう研究を待ってました! 「演歌」についての常識を覆す目からウロコの研究。まだ途中ですが、ワクワクしながら読んでます。[鈴木]


高木裕(著)『調律師、至高の音をつくる』朝日新書

高木裕(著)『調律師、至高の音をつくる』朝日新書

小坂裕子さんの『フレデリック・ショパン全仕事』のもとになった「ショパン・ピアノ全作品連続演奏会」を主催するなど、アルテスもひじょうにお世話になっているタカギクラヴィアの高木裕さんが新著を出しました。

前作、『スタインウェイ戦争』(洋泉社新書)は、ちょっとハードボイルドタッチで、「戦うピアノ調律師」高木さんの面目躍如といった内容でしたが、今回はピアノや調律に関心のあるすべての読者向けに、「やさしい高木さん」(こっちがほんとうの姿ですよね?)が、良い音とはなにか、そのためになにが必要かということをわかりやすく解説してくれています。

[木村]


中村明一(著)『倍音 音・ことば・身体の文化誌』春秋社

倍音 音・ことば・身体の文化誌


内田樹さんが何度か呟いていたので楽しみにしていた本。生で聴いたブルガリアン・ヴォイスにからだが溶けるような経験をして以来、気になっているテーマです。[鈴木]


『commmons: schola vol.6 Ryuichi Sakamaoto Selelctions:The Classical Style』エイベックス

commmons: schola vol.6 Ryuichi Sakamaoto Selelctions:The Classical Style

坂本龍一さん総合監修の『コモンズ:スコラ』シリーズの第6巻は「古典派」。浅田彰、小沼純一、岡田暁生さんが参加、C.P.E.バッハ、ハイドン、グルック、モーツァルトの多様な演奏を収めたCDは聴き応えあり。[鈴木]


アレクサンダー・ヴェルナー(著)喜多尾道冬、広瀬大介(訳)『カルロス・クライバー ある天才指揮者の伝記(下巻)』音楽之友社

カルロス・クライバー ある天才指揮者の伝記(下巻)

クライバーの伝記、待望の下巻。スターになった指揮者が世界で活躍し、伝説になっていく経過が描かれている下巻は、上巻からさらにパワーアップし、読み応えたっぷり。472頁という大著を、美しい日本語で読ませる訳者陣もさすが! 上巻とあわせて、強力にお薦め。[松岡]


栗原裕一郞(企画監修・著)他『村上春樹を音楽で読み解く』日本文芸社

村上春樹を音楽で読み解く

評論家・栗原裕一郞さんの企画監修で、村上春樹の作品に音楽から切り込む本がまた1冊。なにしろ執筆陣に大谷能生、鈴木淳史、大和田俊之という名前が。読まないわけにはいきません。鼎談を読むと、大谷さんはこの本のために初めて全作を読んだそうな。[鈴木]


『フリースタイル13 特集: MY MUSIC FOR LOVERS』フリースタイル

フリースタイル13 特集: MY MUSIC FOR LOVERS


小規模出版社の先輩、吉田さんのフリースタイルが発行しているリトル・マガジンの最新号。アルテスもこんなサイズの雑誌をいずれ!(とか言ってるうちはまだまだですね)[鈴木]


古川日出男(著)『ノン+フィクション』角川書店

ノン+フィクション

一語一語がおそるべき緊張感で迫る長編『MUSIC』、掌編集『4444』に次ぐ古川さんの20冊目となる著作は、「旅行記でありかつ短編集である」というまたしても挑戦的な作品。ページを繰ると黒田育世、佐々木敦といった名前も目に入ってくる。またしても密度の高い読書体験が待っていそう。[鈴木]


仲俣暁生(編著)『編集進化論 ─editするのは誰か?』フィルムアート

編集進化論 ─editするのは誰か? (Next Creator Book)

編集者の端くれとしてあれこれ考えてたことを、現役の優れた編集者たちがさまざまな視点から論じた本。こういう本作りたいなと思ってたので、仲俣さんとあれこれ話がしたくなってます。[鈴木]


志田歩(著)『玉置浩二★幸せになるために生まれてきたんだから』イースト・プレス

玉置浩二★幸せになるために生まれてきたんだから

鈴木が2006年に作った本がめでたく増補改訂版として再び世に出ました。希代の音楽家・玉置浩二の深層に迫った音楽ノンフィクションです。結婚や離婚などワイドショーを賑やかすことの多い人ですが、この本には彼の音楽のすごさを伝えたいという著者と僕の思いが詰まっています。これを読んで玉置浩二の音楽にはまった人も多数。[鈴木]


平川克美(著)『移行期的混乱』筑摩書房

移行期的混乱―経済成長神話の終わり

いまの日本に必要なのはこの「成長しなくてもやっていける戦略」という視点ですよね。大いなる共感の持ちつつ、じゃあその中で会社はどう経営していけばいいのか、その土台になる思想へのヒントを与えてくれる平川さんの書き下ろしです。[鈴木]


野間易通ほか(著) 『非常階段 A STORY OF THE KING OF NOISE』K&Bパブリッシャーズ

非常階段 A STORY OF THE KING OF NOISE

音楽そのものには正直疎いのですが、野間さんのほか、編集者・著者としてお付き合いいただいたことのあるJOJO広重さん、コサカイフミオさんらが執筆した希代のノイズ・バンド30年の軌跡。ライヴDVD付き。[鈴木]


日暮泰文(著)『のめりこみ音楽起業―孤高のインディペンデント企業、Pヴァイン創業者のメモワール』同友館

のめりこみ音楽起業―孤高のインディペンデント企業、Pヴァイン創業者のメモワール (YOU GOTTA BE Series Extra)

業界の大先輩・日暮さんの回想録。90年代に何度か原稿を書いていただきましたが、ダブルのスーツに身を包み社長椅子にデンと収まった姿はとても貫禄がありました。早く読まねば![鈴木]


岡田暁生(著)『「クラシック音楽」はいつ終わったのか?』人文書院

岡田暁生(著)『「クラシック音楽」はいつ終わったのか?──音楽史における第一次世界大戦の前後(レクチャー第一次世界大戦を考える)』人文書院

岡田暁生さんの新著は、京大人文研でおこなわれている第一次世界大戦をめぐる共同研究の一環。文化にかんしていえば、第二次世界大戦よりも第一次世界大戦のほうが、インパクトが大きかったのではないかという仮説にもとづき、1910〜20年代の音楽史を検証しています。たしかに「わけのわからない現代音楽」はこの時期にいっせいに現れ、クラシック音楽が終焉したといえるかもしれません。岡田さんの名著『音楽の聴き方』になぞらえて、『現代音楽の聴き方』と名づけることもできそうな、コンパクトな1冊です。

[木村]


古山和男(著)『秘密諜報員ベートーヴェン』新潮新書

古山和男(著)『秘密諜報員ベートーヴェン』新潮新書

米軍の情報将校だったルロイ・アンダーソン、ジョージ1世がスパイとしてイギリスに送り込んだ(のかもしれない)ヘンデル……と、相性のいい組み合わせ「音楽家とスパイ」。ここにまた新たなスパイ作曲家が誕生。なんと楽聖ベートーヴェンが!? しかもあの「不滅の恋人への手紙」が密書だった!?

面白いです。おすすめ。

[木村]


北山修(著)『最後の授業──心をみる人たちへ』みすず書房

北山修(著)『最後の授業──心をみる人たちへ』みすず書房

ビートルズを知らない子どもたちへ』の著者で精神科医の北山修さんが、今年3月九州大学を定年退職されました。本書は退職前の半年間に、著者が九州大学でおこなった精神分析学にかんする授業を収録したもの。

同名のテレビ・ドキュメンタリーも放映されましたから、ご存知の方も多いと思いますが、「精神分析学」という堅苦しさはまったくなく、しかしひじょうに深い内容が、学生たちの心にすっと染みこんでいく様子が、読んでいて伝わってくるようです。

[木村]


渡辺裕(著)『考える耳【再論】 音楽は社会を映す』春秋社

渡辺裕(著)『考える耳【再論】 音楽は社会を映す』春秋社

2007年に出た『考える耳 記憶の場、批評の眼』にひきつづき、毎日新聞に連載されていた「考える耳」という音楽時評をまとめたもの。

こういった「時評」の単行本化は、出版社の立場からすると、ともするとすぐにネタが古くなってしまって、出版を躊躇することもあるのですが、渡辺さんの書くものは、ネタは古びても「視点」が古びない。それも頑固一徹というのではなく、柔らかさ、好奇心の向かい方が一貫している、というのでしょうか。

また、最近の電子書籍ブームのなかで、とみに思うことですが、いちど新聞などに発表された細かい原稿を、本のかたちにまとめたときに、あらたに加わる価値がたしかにあります。渡辺さんのコラムは毎日新聞でずっと読んでいましたが、もういちどまとめて読んでみたい、と思いますもの。「本」というものの役割は、こういうところにもあるのかもしれません。

[木村]


ジョナサン・ハーヴェイ(著)吉田幸弘(訳)『インスピレーション 音楽家の天啓』春秋社

ジョナサン・ハーヴェイ(著)吉田幸弘(訳)『インスピレーション 音楽家の天啓』春秋社

今年の「Music Today」のテーマ作曲家であるジョナサン・ハーヴェイの著書。作曲家として「インスピレーションはどのようにして与えられるのか」ということを考えるのは、自然なことだと思いますが、この方、それで博士論文まで書いてしまったんですね。それがもとになったのが、本書のようです。モンテヴェルディから現代まで、作曲家たちの証言が次々に引用され、すこぶる面白い内容。Music Todayでハーヴェイの作品が演奏されるのは、8/30(サントリーホール)、8/24にはハーヴェイの講演会も。詳しくは下記リンクをご覧ください。

http://www.suntory.co.jp/news/2010/10757.html

[木村]


A.カーンズ(著)天崎浩二(訳)『MUSIDOKU(ムジドク) あなたの音楽脳を活性化する44の音符パズル! 音楽版ナンバープレース』音楽之友社

A.カーンズ(著)天崎浩二(訳)『MUSIDOKU(ムジドク) あなたの音楽脳を活性化する44の音符パズル! 音楽版ナンバープレース』音楽之友社

なんともお茶目な「音楽書」が出ました。「数独パズル」の音楽版。数字ならぬト音記号やフェルマータ、シャープやフラットなどの音楽記号をマス目に並べる「ナンバー・プレース」です。価格も税込500円とお手頃。原題には「The Musical Number Place Opus 1」とありますが、作品2以降もぜひ出してください!

[木村]


野口卓(著)『シェイクスピアの魔力』(学びやぶっく38)明治書院

野口卓(著)『シェイクスピアの魔力』(学びやぶっく38)明治書院

お世話になっている編集プロダクション「木杳舎」の野口卓さんから、新著のご案内をいただきました。以下、野口さんのメールより引用。

シェイクスピアにはあらゆるジャンルで派生作品が生み出されていますが、 同書では小説、戯曲、芸能(歌舞伎、狂言、落語、演芸)、映画、絵画と、 詩と評論を除くジャンルのさまざまな紹介をしております。 スペースの関係で面白い作品、ユニークな作品をのみを取り上げましたが、 紹介しきれなかった作品は巻末データとして、派生370、参考22作品を掲載しております。 書店でぜひともご覧いただきますようお願いいたします。

面白そうですね。夏休みにぜひ。

[木村]


関孝弘/ラーゴ・マリアンジェラ(著)『イタリア語から学ぶ ひと目で納得!音楽用語事典』全音楽譜出版社

関孝弘/ラーゴ・マリアンジェラ(著)『イタリア語から学ぶ ひと目で納得!音楽用語事典』全音楽譜出版社

編集をされたユージン・プランニングの坂元勇仁さんからのご紹介。前作(『これで納得!よくわかる音楽用語のはなし』)も大好評だった関・マリアンジェラ夫妻による第2弾です。

以下、全音さんのサイトから引用です:

あのベストセラー「これで納得!よくわかる音楽用語のはなし」の第2弾が登場です! 今作は音楽用語のひとつひとつを、イラストで表現しています。 言葉をイメージでつかめるから、"本当の意味"がひと目でわかる!

さらに、ピアニスト・関孝弘氏による演奏に活かせるアドバイス付きで、より実践的になりました。魅力あふれるイラスト満載で、子どもから大人まで"学ぶ楽しみ"と"表現する喜び"を体感できます!
レッスンにもおすすめです!

1人1冊おすすめしたい本です。

[木村]


伊藤康英(編曲)/ホルスト《第1組曲》より〈シャコンヌ〉(『バンドジャーナル』8月号)

7/10発売の『バンドジャーナル』8月号の付録楽譜は、伊藤康英さん編曲のホルスト〈シャコンヌ〉。同誌編集長の大高達夫さんから以下のようなご案内をいただきましたので、紹介させていただきます。

バンドジャーナル8月号(7月10日発売)の付録楽譜は、 ホルスト第1組曲から㈵シャコンヌなのですが、 このスコア、ホルストの自筆スコアをもとに、 伊藤康英先生が校訂したものなんです。 伊藤先生のサイト= http://www.itomusic.com/

この自筆スコア、以前は所在不明だったのですが、
現在は大英図書館が所蔵しており、閲覧可能になっております。
そこで、この5月に伊藤先生がロンドンに赴いて、実際に確認してきました。
この顛末については8月号にエッセイとして紹介しております。

どこが違うかといいますと、
1・編成が違う
現在広く使われているコリン・マシューズ版など、
これまでの版は、ホルストが指定した編成になってません。
時代の要請に応じて、さまざまな楽器が追加・削除されています。
特に、ホルストはユーフォニアムとバリトンを別々に独立したパートとして
書いているのですが、現在はバリトンパートが削除されております。

2・スコアの書き方が違う
実際にスコアをご覧になればお分かりになると思いますが、
ホルストは上から木管の高音から低音、金管の高音から低音、打楽器という
順でスコアを書きました。ですので、フルートとオーボエの間にエスクラが、
また、ホルンとトロンボーンの間にバリトンのパートが書かれています。
こうした違いがなぜ大事かと言うと、ホルストが書いたスコアが
「見た目にも美しい」ように書かれているのに、
順序を入れ替えるとその美しさが分かりにくくなるからなのです。

その他、これまでの版での間違いなどを修正し、なおかつ現代の吹奏楽で
演奏可能なスコアを、校訂報告と楽曲分析つきで付録にしました。
引き続き、10月号に㈼インテルメッツォ、12月号に㈽マーチを掲載予定です。

また、7月21日には、
ダグラス・ボストック指揮洗足学園音楽大学グリーン・タイ・ウィンド・アンサンブ
ルが、
この研究成果を取り入れた第1組曲の演奏を行ないます。
コンサート情報=
http://www.senzoku.ac.jp/music/concert/2010/program_1007/0721.html

雑誌の付録楽譜って、ある意味その分野の「最新情報」的な性格もあって興味深いです。興味をもたれた方はコンサートにもぜひお運びください。

[木村]


浜田淳『ジョニー・B・グッジョブ 音楽を仕事にする人々』

浜田淳(著)『ジョニー・B・グッジョブ 音楽を仕事にする人々』KANZEN
ミュージシャン、マネージャー、プロモーター、エンジニア、ライター、編集者、舞台監督など、音楽に関わる仕事を生業としている25人のインタビュー集。職業ガイドではなく、徹底してその人個人がなにを考えなにをしているかが語られていてとても面白いです。[鈴木]


金澤正剛(著)『古楽のすすめ』音楽之友社

金澤正剛(著)『古楽のすすめ』音楽之友社

「音楽選書」の1冊として1998年に刊行され、日本ミュージック・ペンクラブ賞を受賞した名著が、増補改訂されて復活。バロック音楽についての章が書き足されています。古楽ファン必携の一書。

[木村]


加藤義彦+鈴木啓之+濱田高志(著)『作曲家・渡辺岳夫の肖像 ハイジ、ガンダムの音楽を作った男』ブルース・インターアクションズ

加藤義彦+鈴木啓之+濱田高志(著)『作曲家・渡辺岳夫の肖像 ハイジ、ガンダムの音楽を作った男』ブルース・インターアクションズ

鈴木も木村もお世話になっているライター兼アンソロジストの濱田高志さんからご案内いただきました。アニソン黄金時代最大の巨匠・渡辺岳夫を多面的に掘り下げた本。特別寄稿として収録されている片山杜秀さんの「「非情のライセンス」をめぐる自由連想」は、昨年6月に京都大学でおこなわれた岡田暁生さんと片山さんの公開対談「21世紀の音楽批評を考える」のために書きおろされた文章を改稿したものです。片山さんのアクロバティックな着想の冴えが楽しめます。

[木村]


新実徳英(著)『新実徳英の作曲入門』音楽之友社

新実徳英(著)『新実徳英の作曲入門』音楽之友社

『教育音楽 中・高校版』2006年7月号から2009年5月号まで連載された「新実徳英の作曲入門──音を聴く、考える、作る」が本になりました(書き下ろしでの増補も含みます)。

いささか個人的な話になりますが、高校時代に新実さんの合唱曲《やさしい魚》を歌っていらい、天性のメロディメーカーとしての新実さんに憧れ、作曲家になることを夢みたことも。編集者になってから、縁あって新実さんの随想集『風を聴く、音を聴く』(題字はこれまた尊敬する哲学者・今道友信先生に書いていただきました)を担当することができたのですが、本が完成したのち、新実さんに提案したのが、「若い人に向けての作曲入門書」でした。

忙しい新実さんに確実に執筆していただくために、『教育音楽』の岸田編集長の協力を得て連載の枠を確保してもらい、どんな内容にするかを話し合うために、蓼科にある新実さんの別荘を訪れ、にわか作曲レッスンをつけていただいたことなど、懐かしく思い出されます。連載が始まった翌年、諸事情あって会社を辞めることを報告したときの新実さんの「あーっ!」という溜息が忘れられません。

それから3年。音楽之友社の若い編集者、上田友梨さんが本を完成させてくれました。自分が担当したのは第1章の途中まででしたが、蓼科でお酒を飲みながら語らったアイディアが花ひらき、ときには思いもかけないかたちに発展しているのを見るのは、嬉しい驚きです。ぜひ多くの方々に読んでほしい1冊です。

[木村]


サイモン・レイノルズ(著)野中モモ・新井崇嗣(訳)『ポストパンク・ジェネレーション1978-1984』シンコーミュージック

サイモン・レイノルズ(著)野中モモ・新井崇嗣(訳)『ポストパンク・ジェネレーション1978-1984』シンコーミュージック
B5判で376ページという大部な翻訳書を、シンコーミュージックの辻口さんから送っていただきました。80年代当時夢中になって聞いていた名前がずらずら目次に並んでいて、それだけで盛り上がります。ジャケットも豊富に掲載するなど、手のかかった労作。[鈴木]


小沼ますみ(著)『新版 ショパンとサンド 愛の軌跡』音楽之友社

小沼ますみ(著)『新版 ショパンとサンド 愛の軌跡』音楽之友社

1982年に「音楽選書」の1冊として刊行された本の新版。旧版刊行当時は、ショパンとサンドについてはじめてのまとまった書籍だったと思います。その後の研究成果などもとりいれて、さまざまな改訂がほどこされているようです。

[木村]


小沼純一(編)『高橋悠治 対談選』ちくま学芸文庫

小沼純一(編)『高橋悠治 対談選』ちくま学芸文庫

未入手ですが、これは読みたい! 以下、小沼純一さんのブログからの引用。

対談者は、作曲家として、ユン・イサン、ルイジ・ノーノ、ピエール・ブーレーズ、 柴田南雄、武満徹、三善晃、権代敦彦、といった内外の人たち(故人を含む)から、 作家の丸谷才一、高史明、鎌田慧、 ほかに研究者/批評家として、 山口昌男、村上陽一郎、渡辺裕、浅田彰、永沢哲 という多彩な顔ぶれです。 時期としては1971年から2008年までと長期にわたっており、 これまで、高橋悠治の対談は1冊にまとめられたことがない、 というのがポイントとしてあります。
[木村]

大石始(著)『関東ラガマフィン』ブラッド刊

大石始(著)『関東ラガマフィン』
元「bounce」編集部、約1年の音楽世界放浪を経てフリーライターに、という経歴を持つ大石さんは、いま最も期待している書き手の一人です。80年代の日本におけるレゲエ・シーンをドキュメントしたこの本は、34人に及ぶ関係者への取材をもとに書き下ろした労作!


速水健朗, 円堂都司昭, 栗原裕一郎, 大山くまお, 成松哲(著)『バンド臨終図巻』河出書房新社

速水健朗, 円堂都司昭, 栗原裕一郎, 大山くまお, 成松哲(著)『バンド臨終図巻』河出書房新社
“それは本当に「音楽性の違い」だったのか? クレイジー・キャッツからビートルズ、フリッパーズ・ギター、羞恥心まで古今東西洋邦200バンドの解散の真相に迫る”


東川清一(著)『旋法論──楽理の探究』春秋社

東川清一(著)『旋法論──楽理の探究』春秋社

東川先生の『日本の音階を探る』(音楽之友社、1990)を編集担当させていただいてからもう20年。春秋社で12冊目という先生の最新作は、16世紀や古代ギリシアなどの重要文献を読み解きつつ、さまざまな旋法理論を俯瞰し、基礎づけをおこなうというもの。「移動ド」か「固定ド」かという議論には、わたし自身はその後また別な視点をもつようになりましたが、この「東川旋法論」との出会いがなかったら、音組織にたいする基本的な考え方をもてなかったと思います。

[木村]


ジャネット・コールマン、アル・ヤング(著)川嶋文丸(訳)『ミンガス/ミンガス 2つの伝説』ブルース・インターアクションズ

ジャネット・コールマン、アル・ヤング(著)川嶋文丸(訳)『ミンガス/ミンガス 2つの伝説』ブルース・インターアクションズ
『至上の愛』と『クリフォード・ブラウンの生涯』で僕もお世話になった川嶋文丸さんの翻訳で刊行されたモダン・ジャズの巨人チャールズ・ミンガスの伝記。詳細なディスコグラフィ付です。[鈴木]


田中伊佐資(著)『ぼくのオーディオ ジコマン開陳 ドスンと来るサウンドを求めて全国探訪』ブルース・インターアクションズ

ぼくのオーディオ ジコマン開陳 ドスンと来るサウンドを求めて全国探訪
月刊『ステレオ』連載がドンと単行本化。豪快かつ破格のオーディオ本です。[鈴木]


こだま和文(著)『空をあおいで』K&Bパブリッシャーズ

こだま和文(著)『空をあおいで』K&Bパブリッシャーズ
元MUTE BEATの名トランペッター、こだま和文さんの新刊。『すばる』や『クイック・ジャパン』に掲載されたエッセイと、90年代に発表した著書『スティルエコー──静かな響き』と『ノート・その日その日』が収録されてます。[鈴木]


安田謙一・辻井タカヒロ(著)『ステレオ!これがロック漫筆VOL.1 ロックンロール・ストーブリーグ』音楽出版社

安田謙一・辻井タカヒロ(著)『ステレオ!これがロック漫筆VOL.1 ロックンロール・ストーブリーグ』音楽出版社
国書刊行会からの『ピントがボケる音』以来の安田謙一さんの単著(といっても漫画との共演)で、『CDジャーナル』誌での連載の単行本化です。タイトルはビートルズですね^^。[鈴木]


石橋純(著)『中南米の音楽 歌・踊り・祝宴を生きる人々』東京堂出版

石橋純(著)『中南米の音楽 歌・踊り・祝宴を生きる人々』東京堂出版


坂本龍一(総合監修)『commons: schola vol.5 ドラムズ&ベース』commons/エイベックス

坂本龍一(総合監修)『commons: schola vol.5 ドラムズ&ベース』commons/エイベックス


安田謙一、辻井タカヒロ(著)『ロックンロール・ストーブリーグ ステレオ!これがロック漫筆VOL.1』音楽出版社

安田謙一、辻井タカヒロ(著)『ロックンロール・ストーブリーグ ステレオ!これがロック漫筆VOL.1』音楽出版社


レコード・コレクター増刊『シンガー・ソングライター』ミュージック・マガジン

『レココレ・アーカイヴズ5 シンガー・ソングライター』ミュージック・マガジン


茂木一衛(著)『音楽宇宙論への招待』春秋社

茂木一衛(著)『音楽宇宙論への招待』春秋社

横浜国立大学の茂木一衛さんの新著。前著『宇宙を聴く』からもう14年になるんですね。その前著の内容をベースにしながらも、さらにスケールアップさせて、主人公の男女が2600年の音楽史を時空旅行するというのが、今回の本。

茂木さんのレクチャー・コンサート・シリーズをお聴きになったことのある方はおわかりになると思いますが、たいへんわかりやすく、しかも情熱的に、音楽の本質、人間にとっての根本的価値などが語られます。いっぷう変わった音楽美学史としても、楽しめるのではないかと思います。

[木村]


鈴木カツ(著)『ボブ・ディランのルーツ・ミュージック』白夜書房

鈴木カツ(著)『ボブ・ディランのルーツ・ミュージック』白夜書房

カツさん、ますますエネルギッシュな執筆活動をつづけていらっしゃいます。白夜書房さんもコアないい本を出されてますね。

刊行記念で、菅野ヘッケルさんとカツさんのトークショウがあるそうです(4/5、青山ブックセンター六本木店)。

[木村]


『生きるための試行──エイブル・アートの実験』フィルムアート社

生きるための試行 エイブル・アートの実験』フィルムアート社

大友良英さんらが参加している『音遊びの会』(「知的な障害を持つ人と音楽家たちによる即興演奏の試み」本書より)をはじめとする、障害者による「絵画、インスタレーション、ダンス、演劇などの表現の可能性に賭ける芸術ムーヴメント」=『エイブル・アート』の活動をまとめた1冊。『音遊びの会』の演奏は大友さんの本『MUSICS』(岩波書店)付録DVDで見ることが出来ます。春にはドキュメンタリー映画『音の城音の海』が公開予定。

[鈴木]


インゴ・メッツマッハー(著)小山田豊(訳)『新しい音を恐れるな──現代音楽、複数の肖像』春秋社

インゴ・メッツマッハー(著)小山田豊(訳)『新しい音を恐れるな──現代音楽、複数の肖像』春秋社

春秋社・高梨さんよりご案内いただきました。以下、春秋社の商品ページよりの引用です。

いま最も熱い指揮者が語る「音楽入門」。革新的なプログラムと生命力溢れる演奏解釈で定評あるドイツ楽壇の鬼才、インゴ・メッツマッハーが「新しい音」=現代音楽の魅力を縦横無尽に紹介する。シュトックハウゼンやルイージ・ノーノら第一線の作曲家との交流、演奏現場での体験もまじえ、「未聴の世界」へと誘う語りの妙味。新鮮な発見、思わず曲が聴きたくなる!

■本書に登場する主な作曲家
チャールズ・アイヴズ
グスタフ・マーラー
クロード・ドビュッシー
オリヴィエ・メシアン
アルノルト・シェーンベルク
エドガー・ヴァレーズ
カールハインツ・シュトックハウゼン
ルイージ・ノーノ
カール・アマデウス・ハルトマン
イーゴリ・ストラヴィンスキー
ジョン・ケージ

指揮者による現場感覚あふれる現代音楽レコメンドといった趣で、たしかに「聴いてみたく」なります。巻末には用語集や索引も。コンパクトながら気のきいた1冊です。

[木村]


【3/10刊】ピエール・ブーレーズ(著)笠羽映子(編訳)『ブーレーズ作曲家論選』ちくま学芸文庫

ピエール・ブーレーズ(著)笠羽映子(編訳)『ブーレーズ作曲家論選』ちくま学芸文庫

こちらも筑摩書房の高田さんよりのご案内。いつもながらブーレーズさん、かなり舌鋒鋭く批評してるんでしょうね(笑)。また、最近のちくま学芸文庫の音楽書の充実ぶりには目をみはるものがあります。やっぱり文庫って読みやすいですし。

[木村]


マイク・モラスキー(著)『ジャズ喫茶論──戦後の日本文化を歩く』筑摩書房

マイク・モラスキー(著)『ジャズ喫茶論──戦後の日本文化を歩く』筑摩書房

筑摩書房の高田さんからご案内いただきました。おもしろそうなテーマです。

弊社でもモラスキーさんが編者をつとめる『ニュー・ジャズ・スタディーズ』を近刊予定。こちらもお楽しみに!

[木村]


今谷和徳+井上さつき(著)『フランス音楽史』春秋社

今谷和徳+井上さつき(著)『フランス音楽史』春秋社

ようやく登場したという感のある「日本人の書き下ろしによる本格的なフランス音楽通史」。

中世からロココまでの「第1部」が今谷さん、フランス革命から現代までの「第2部」が井上さんの書き下ろし。「音楽史を単なる「大作曲家列伝」として記述するのではなく、社会と音楽という視点を持って描くこと、時代の流れの中で音楽家たちがどのように生き、芸術に携わっていたかを描くこと」(あとがきより)という執筆態度は、たとえば章立てが「中世」「ルネサンス」「バロック」「古典派」といった音楽史上の時代区分によっていないことに、端的にあらわされています。なによりも、各部それぞれひとりの著者による揺るぎのない視点からの歴史叙述は、「通史を読むよろこび」を喚起してくれます。

フランス音楽を愛するすべての人にすすめたい労作です。

[木村]


トン・コープマン(著)風間芳之(訳)『トン・コープマンのバロック音楽講義』

トン・コープマン(著)風間芳之(訳)『トン・コープマンのバロック音楽講義』音楽之友社

音楽之友社のホームページより:

世界的に著名なオルガニスト、チェンバロ奏者、指揮者である著者が、バロック音楽の演奏解釈法を簡潔にまとめたもの。演奏家が作曲家の意図を最大限に汲むためには、作曲当時の人々の音楽に対する考え方、記譜や演奏の習慣を知ることが必要で、そのためには演奏者自らが原典資料、当時の文献などを渉猟して自分なりの結論を出さねばならない。本書は、各国語による原典資料のファクシミリを利用して、それら原典の読み方、解釈の仕方を読者にアドバイスするもので、日本でますます隆盛を極めるオリジナル楽器演奏への貴重な指針となることはもちろん、音楽大学などでの演奏習慣についての授業では格好の教材となろう。これまで音楽学者たちによって書かれてきたバロック音楽の演奏法研究とは異なる、演奏家ならではの実践的な視点が本書の最大の魅力であろう。

80年代にオランダ語で書かれ、原書も絶版になっていたものをコープマンの弟子にあたる演奏家・風間芳之氏が全訳したもの。強くおすすめです。

[木村]


ケヴィン・バザーナ(著)鈴木圭介(訳)『失われた天才──忘れられた孤高の音楽家の生涯』

ケヴィン・バザーナ(著)鈴木圭介(訳)『失われた天才──忘れられた孤高の音楽家の生涯』春秋社

伝説のピアニスト、エルヴィン・ニレジハージ。“フォルティッシモの大馬鹿野郎”の人生行路。


中山康樹(著)『マイルスの夏、1969』

中山康樹(著)『マイルスの夏、1969』扶桑社新書
“大傑作『ビッチェズ・ブリュー』はいかにして産み落とされたか?”


野田努他(著)『ゼロ年代の音楽──壊れた十年』

野田努・三田格・松村正人・磯部涼・二木信(著)『ゼロ年代の音楽──壊れた十年』河出書房新社

2000年代の総括した150枚のディスクガイド付き。


芹沢 一也+荻上チキ(編)『日本思想という病』(SYNODOS READINGS)光文社

芹沢 一也+荻上チキ(編)『日本思想という病』(SYNODOS READINGS)光文社

1章 保守・右翼・ナショナリズム 中島岳志
2章 中今・無・無責任 片山杜秀
3章 文系知識人の受難----それはいつから始まったか 高田里惠子
4章 思想史からの昭和史 植村和秀
5章 ニッポンの意識----反復する経済思想 田中秀臣

◎戦前・昭和の思想を捉え直し、現状打破のヒントをさぐる
◎気鋭の研究者たちが解き明かす「この国の失敗」の本質
◎現在の日本の停滞感は、戦前・昭和のそれとよく似ていると言われる。その原因はいったい何か? 解決の糸口はどこにあるのか? 気鋭の思想家たちが、戦前の思想および思想を取り巻く状況を新たな視点で読み解き、現状打破のヒントをさぐる。混沌とした現在(いま)を生き抜くための思想の書。

(以上、Amazonの商品ページに掲載された「出版社からのコメント」より)


スージー・ロトロ(著)菅野ヘッケル(訳)『グリニッチヴィレッジの青春』

スージー・ロトロ(著)菅野ヘッケル(訳)『グリニッチヴィレッジの青春』河出書房新社


セルジオ・カブラル(著)荒井めぐみ(訳)『ナラ・レオン 美しきボサノヴァのミューズの真実』

『ナラ・レオン 美しきボサノヴァのミューズの真実』ブルース・インターアクションズ


武満徹(著)安芸光男(聞き手)『武満徹 自らを語る』青土社

武満徹(著)安芸光男(聞き手)『武満徹 自らを語る』青土社


前田塁(著)『紙の本が亡びるとき?』青土社

前田塁(著)『紙の本が亡びるとき?』青土社


佐々木敦(著)『文学拡張マニュアル』青土社

佐々木敦(著)『文学拡張マニュアル』青土社


シーナ(著)『YOU MAY DREAM ユー・メイ・ドリーム—ロックで輝きつづけるシーナの流儀』じゃこめてい出版

シーナ(著)『YOU MAY DREAM ユー・メイ・ドリーム—ロックで輝きつづけるシーナの流儀』じゃこめてい出版


ボリス・ヴィアン(著)/鈴木孝弥(訳)『ボリス・ヴィアンのジャズ入門』シンコーミュージック

ボリス・ヴィアン(著)/鈴木孝弥(訳)『ボリス・ヴィアンのジャズ入門』シンコーミュージック


R. アンガーミュラー(著)/久保田慶一(訳)『モーツァルト殺人法廷』春秋社

R. アンガーミュラー(著)/久保田慶一(訳)『モーツァルト殺人法廷』春秋社


鈴木カツ(著)『ロック&ポップス名曲事典300』ヤマハ・ミュージック・メディア

鈴木カツ(著)『ロック&ポップス名曲事典300』ヤマハ・ミュージック・メディア


井上貴子(編著)『日本でロックが熱かったころ』青弓社

井上貴子(編著)『日本でロックが熱かったころ』青弓社


ボリス・ベルマン(著)阿部美由紀(訳)『ピアニストからのメッセージ 演奏活動とレッスンの現場から』音楽之友社

ボリス・ベルマン(著)阿部美由紀(訳)『ピアニストからのメッセージ 演奏活動とレッスンの現場から』音楽之友社


原雅明(著)『音楽から解き放たれるために 21世紀のサウンド・リサイクル』フィルムアート社

原雅明(著)『音楽から解き放たれるために 21世紀のサウンド・リサイクル』フィルムアート社


雑誌『ULYSSES』シンコー・ミュージック

雑誌『ULYSSES』シンコー・ミュージック