アンドレ・シェフネル(著)/山内里佳(訳)『ドビュッシーをめぐる変奏──印象主義から遠く離れて』(みすず書房)

アンドレ・シェフネル(著)/山内里佳(訳)『ドビュッシーをめぐる変奏──印象主義から遠く離れて』(みすず書房)

今年はドビュッシー生誕150年。これからもいろんな「記念出版」があるものと思いますが、こんなに重要な文献が翻訳されずに残っていたとは!──シェフネルは「フランス民族学において初めて音楽を研究対象とした人物」(訳者あとがき)とありますから、文化人類学者、民族音楽学者とするのが妥当なのだと思いますが、西洋音楽学者としても第一線で活躍した人で、とりわけヴァーグナー、ストラヴィンスキーなどの研究、そして親交のあったブーレーズと交わした書簡集(『ブーレーズ‐シェフネール書簡集1954‐1970』音楽之友社)などでも知られる人です。この本は彼が生涯愛したドビュッシーにかんする論考を集めたものです。「作曲家の心を、恐怖の風が吹き抜ける」──帯の惹句に心穏やかでいられません。

[木村]