今谷和徳+井上さつき(著)『フランス音楽史』春秋社

今谷和徳+井上さつき(著)『フランス音楽史』春秋社

ようやく登場したという感のある「日本人の書き下ろしによる本格的なフランス音楽通史」。

中世からロココまでの「第1部」が今谷さん、フランス革命から現代までの「第2部」が井上さんの書き下ろし。「音楽史を単なる「大作曲家列伝」として記述するのではなく、社会と音楽という視点を持って描くこと、時代の流れの中で音楽家たちがどのように生き、芸術に携わっていたかを描くこと」(あとがきより)という執筆態度は、たとえば章立てが「中世」「ルネサンス」「バロック」「古典派」といった音楽史上の時代区分によっていないことに、端的にあらわされています。なによりも、各部それぞれひとりの著者による揺るぎのない視点からの歴史叙述は、「通史を読むよろこび」を喚起してくれます。

フランス音楽を愛するすべての人にすすめたい労作です。

[木村]