イーゴリ・ストラヴィンスキー(著)、笠羽映子(訳)『音楽の詩学』(未来社)

イーゴリ・ストラヴィンスキー(著)、笠羽映子(訳)『音楽の詩学』(未来社)

ストラヴィンスキーが1939年から40年にかけてハーヴァード大学でおこなった同名の講義録の全訳。もともとダヴィッド社から1955年に佐藤浩訳で出版されていましたが、そちらは英語版からの重訳。さまざまな版が刊行された経緯については訳者あとがきに詳細にまとめられていますが、今回の翻訳は決定版といっていい2000年刊行の仏語版から翻訳されたものだそうです。

《春の祭典》ほかの初演時のエピソードが示すとおり、「革命児」とみなされてきたストラヴィンスキーですが、以下のような発言には、音楽芸術の本流に自らを位置づける自負があふれています。

……芸術は本質上建設的〔創造的〕なものです。革命は均衡の破壊を伴います。革命とは一時的な混沌(カオス)です。ところで、芸術はカオスとは正反対のものです。芸術がその生き生きとした創造活動において、その実存自体において直接脅かされることなく、カオスに身を委ねることはありません。

本文だけで130ページに満たない掌編ですが、味読に値する重要な著作だと思います。

[木村]