ジュファン(文)、バスタン+エヴラール(写真)/博多かおる(訳)『音楽家の家──名曲が生まれた場所を訪ねて』(西村書店)

ジュファン(文)、バスタン(写真)、エヴラール(写真)/博多かおる(訳)『音楽家の家──名曲が生まれた場所を訪ねて』(西村書店)

この本が届いて、いちばん最初に開けたのは、モーリス・ラヴェルのページ。小柄な作曲家の身体に合わせて、すべてが小ぶりに作られているというモンフォールの「見晴らし台」。意外に質素な概観、几帳面にととのえられ、まさに《こどもと魔法》の舞台になりそうな室内の様子が、建物についてのラヴェルの発言とともに明かされる趣。そのほかにもハイドンからプーランクまで、その音楽がどんな住処から現れたのか、彼らがどんなモノたちに囲まれながら音符を書きつけていたのか、想像をふくらませながら、飽かず一日中眺めていたくなる幸せな本です。19世紀フランス文学の研究者でありながら、ピリスに師事したすぐれたピアニストでもある訳者による美しい翻訳も特筆もの。

[木村]